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第234話 そーすけさん
「そーすけ…?」
戻ってきた斗織は崩れ落ちたお兄さんの場所を横取り俺の身体を抱き寄せると、カコッて音付きで隣のベンチに一時置いたドリンクカップを取って手渡してくれた。
「いいからお前はココア飲んでろ。身体冷えてんだろ」
「うん。ありがと」
保温性の有りそうなカップに恐る恐る口を付ける。
……あれ?適温だ。
ホットの飲み物は大抵一口目で熱ってなるのに、このココアは丁度いい。
「飲めるか?」
「うん、あったかくて美味しいよ」
にこって笑うと、頭をよしよし撫でてくれた。
柔らかい表情で俺を見て、自分のカップに口を付けて、それから………
「で、テメェはここで何してやがったんだ、蒼佑」
ギン───と空気が音を発した。…気がした。
2人は知り合いなのかな?
だけど、斗織の目が、この上なく尖って吊り上がってる。
どうしてか分からないけど、すっごく怒ってる。
「え~?俺結構ここ良く来るんだけど。斗織こそ、初めて見たけど今日はどうしたの?デート?」
睨まれてる本人はどこ吹く風で、楽しそうに笑いながら斗織のほっぺを指で突付いてる。
あ、それだめ。俺以外がやると凄い怒られるやつ。
「スケート場のことはどうでもいいんだよ! 勝手に何処ででも滑ってやがれ!」
ほら、お兄さん手を叩き落とされた。
「お察しの通り俺らはデート中なんだよ。俺は、人のもんにちょっかい掛けてんじゃねェっつってんだ!」
「えー?斗織の恋人とか知らなかったしー」
手を擦りながら、へらっと笑うお兄さん。
「あっ、斗織。お兄さん、俺のこと男だって分かってたし、変な意味で声掛けたんじゃないと思うよ」
不本意だけど、女の子に間違われてナンパされてた訳じゃないから大丈夫だと伝えようと声を掛けると、斗織は不機嫌な眉尻を少しだけ下げて、
「こいつ、男好きだから」
お兄さんを指差して、溜息を吐き出した。
「男好きじゃなくて、男しか愛せない、ハードボイルドな男って言うかな」
「ハードゲイだ」
「ゲイが男好きなら、ノンケなお前は女好きか?お前は女に目の無いエロ魔神か」
「誰がエロ魔神だ」
いや、斗織はなんだかんだでエロ魔神だよ。多分、俺専門の…。
「大体お前、いつコッチ側に来たんだよー。タチ?まさかネコじゃないよな?」
「うるせェよ。ソッチ側になんか行ってねーよ」
「じゃあこう言うエロ可愛い子はこっちに寄越せ!ノンケには目の毒だ!」
「こいつは俺ンだっつってんだろが!」
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