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第236話 粗大ごみ

「テメェも遼におかしなこと吹き込んでんじゃねェ!!」 「いだっ!!」 俺の数倍、もしかしたら数十倍強い力で脳天を叩かれたお兄さんは、頭を両手で抱えて床に小さく丸まり込んだ。 「斗織ひどーい。俺、何も吹き込んでないし…。てか、可愛い男の子の独り占めはんたーい」 「っせェよ、遼泣かせやがって。スケート靴で踏むぞ!」 「だっ、だめ!それは!いたいっ!」 「ああ?誰だこんな所に粗大ゴミ捨ててった奴は。エッジで切り刻めば燃えるゴミに昇華出来るか?今は燃やすゴミって言うんだったか」 「できないっ、できないからっ!斗織くんっ!? そんなことしたら死体損壊で逮捕されちゃうよ?!」 お兄さんは生きてるから、まだ死体じゃないと思うよ? 「はっ、蒼佑損壊で逮捕とかあり得ねェし」 斗織は途端、興味を無くしたように、お兄さんから視線を外すとドリンクカップをグイッと傾けた。 そのカップから、シャリって小さな音がして、初めて気付く。 カップが保温になってる俺のものとは違う。 あれ、アイスドリンクのカップだ。 「斗織、何飲んでるの?」 「あ?…ココア」 ココア?斗織なら、ホットコーヒーを飲むかと思ってた。 けど…… 俺の手には、斗織の買ってくれたホットココア。 丁度いいあったかさの、すぐに口に出来た、熱すぎないホットドリンク。 手袋を外して、カップを包み込む。 保温になってるから、熱の伝わり方は缶やペットボトルには劣るけど。 段々と温まってく手で、カップを傾けてココアを一口。 「あったかぁい」 「ん。よかったな」 ───やっぱり。 その満足そうな笑みに、確信する。

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