236 / 418
第236話 粗大ごみ
「テメェも遼におかしなこと吹き込んでんじゃねェ!!」
「いだっ!!」
俺の数倍、もしかしたら数十倍強い力で脳天を叩かれたお兄さんは、頭を両手で抱えて床に小さく丸まり込んだ。
「斗織ひどーい。俺、何も吹き込んでないし…。てか、可愛い男の子の独り占めはんたーい」
「っせェよ、遼泣かせやがって。スケート靴で踏むぞ!」
「だっ、だめ!それは!いたいっ!」
「ああ?誰だこんな所に粗大ゴミ捨ててった奴は。エッジで切り刻めば燃えるゴミに昇華出来るか?今は燃やすゴミって言うんだったか」
「できないっ、できないからっ!斗織くんっ!? そんなことしたら死体損壊で逮捕されちゃうよ?!」
お兄さんは生きてるから、まだ死体じゃないと思うよ?
「はっ、蒼佑損壊で逮捕とかあり得ねェし」
斗織は途端、興味を無くしたように、お兄さんから視線を外すとドリンクカップをグイッと傾けた。
そのカップから、シャリって小さな音がして、初めて気付く。
カップが保温になってる俺のものとは違う。
あれ、アイスドリンクのカップだ。
「斗織、何飲んでるの?」
「あ?…ココア」
ココア?斗織なら、ホットコーヒーを飲むかと思ってた。
けど……
俺の手には、斗織の買ってくれたホットココア。
丁度いいあったかさの、すぐに口に出来た、熱すぎないホットドリンク。
手袋を外して、カップを包み込む。
保温になってるから、熱の伝わり方は缶やペットボトルには劣るけど。
段々と温まってく手で、カップを傾けてココアを一口。
「あったかぁい」
「ん。よかったな」
───やっぱり。
その満足そうな笑みに、確信する。
ともだちにシェアしよう!