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第239話 人工呼吸は
俺、そーすけさんが斗織に意地悪だからって、ちょっと突慳貪 にし過ぎちゃったかな。
ちらりと見上げると、初めに見せた優しい笑顔を向けられる。
この人もきっと、斗織のことが可愛くて、ついからかっちゃう性質なんだろうな。
マナちゃん先生と一緒で。
そう思えば、親近感も湧いてくる。
「えへへ、ありがとうございます、そーすけさん。斗織が戻ってくるまで、一緒にいてくださいね」
見上げてにっこり、お願いした。
すぐに、いいよって頷いてくれると思ったのに、そーすけさんは俺の頭に手を乗せたまま、ピクリとも動かなくなってしまう。
「……えと?…そーすけさん……?」
「っ……!」
あ、ピクリとは動いた。
「あの、どうし…」
「りょーちゃ~んっ!斗織やめよ?!お兄さんと付き合おうよぉ~っ!」
「えっ、えっ!?むりっ…!!」
突然抱きついてきたそーすけさんを引き離そうと踏ん張るけど、とんでも無い力で抱き込まれてて全然対抗出来ない。
「放してっ、そーすけさん!」
「いーやーだー!俺のものにする!」
いやだって、駄々っ子か!!
「俺の方が斗織より大人だし、優しいよ」
「優しくない~~っ、はーなーせっ!」
「お金もあるし、背も高い!」
「そんなことどーでもいいっ!放せって言ってんのーっ!」
「おんなじ三男坊でも俺は自由だよ」
「自由じゃなくて悪かったな、このクソ野郎!」
ドゴッ、だか、ガキッ、だか物騒な音が聞こえたと思った瞬間、
「っ~~~ッッ!!?」
声にならない悲鳴が聞こえ、押さえ付ける腕の力が緩んで、俺の身体は自由になった。
だけどそう思ったのも一瞬、気付いたら斗織の腕に抱き込まれて強い力で束縛されていた。
苦しいけど、この圧迫感は……全然嫌じゃない。
大好きな匂いに包まれて、幸せでうっとりしてしまうほど。
そう、うっとりと………っ、うっ…、息が……!
ギブ、ギブ!斗織っ、ギブーッ!!
バンバンバン!と僅かに自由だった手で脚を叩くと、窒息寸前の俺に気付いてすぐに拘束を緩めてくれる。
「遼っ、平気か!?人工呼吸は!?」
にわかに慌てた斗織の申し出を首を横に振って拒否する。
いらないよ、こんなとこで人工呼吸なんて!ばかっ!
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