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第243話 緊張

「はーい」 中から女の人の声がした。 「あーい!」 それから、小さな子の声。 噂の、斗織の姪っ子かな? …どうしよう。緊張してきた…… 「斗織です。大和兄さんに呼ばれて来ました」 つないだ手にぎゅっと力を込めると、握り返される。 「はい。どうぞ」 玄関に立っていたのは、綺麗な女の人だった。 多分20代半ばぐらいの、俺より少し背の低い、笑顔の優しそうな人。 「いらっしゃい」 「っ…はじめましてっ!」 ガバリと頭を下げる。 「こんにちは、芽衣さん。すみません」 「いいえ。そちらの子が?」 「うん」 「とーゅおにーたっ、にちはっ」 「おー、こんにちは、真衣」 「だっこ!あしょぶ?」 「後でな。お父さんの用が終わったら遊ぼうな」 「おにーたっはぁ?」 「こっちのお兄ちゃんはな」 下げっ放しで上げられなかった頭を、斗織の掌が優しく撫でる。 「遼」 名前を呼ばれて、そろそろと顔を上げる。 玄関を上がった少し高いところから、小さな女の子の大きな瞳が俺に向けられていた。 「りょー…おにーた?」

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