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第245話 暴力的な優しい鬼

「話半分で聞いてたが、本当だったんだな。男のくせしてスゲェ可愛いってのは」 「……まあ、それは…。で、兄さん、そろそろ…」 「で?お前はそろそろ泣き止んだか?遼」 「はっ、はいっ!もう大丈夫です!」 「緊張してんのか?気にしねェでもっと寛げよ」 「は…はい………」 やっぱり斗織のお兄さんは、優しい人だった。 ………けど。 どうして子供みたいに膝に抱え込まれてしまったのかは、ちょっと解せない。 お姉ちゃんとマナちゃん先生が現れてひと悶着あった後、部屋から肩を揺らしながら出てきて一言、「うるせェ!」とマナちゃん先生と斗織の頭を一発ずつ殴ったのは、斗織によく似た大人の男の人だった。 「ん?お前か?遼っつうんだっけ?どうした、男がそんなに泣いて。みっともねーぞ?」 俺に目を合わせるとその人は眉間の皺をそっと消して、俺の頭を撫でてくれた。 それから、ヒョイって抱き上げられて。 「斗織、遼の靴、脱がしてやれ」 「えっ、…あ、ああ」 皆が見てる中、抱えられたまま部屋に連れて行かれて。 「真衣、お前は部屋で兄ちゃん達に遊んでもらって来い」 「あい!」 「芽衣、お前は真衣連れてったらすぐ戻ってこい」 「はい」 それからずっと、俺は大和お兄さんの膝の上。 俺、もう泣き止んだのに…、って言うか、大和お兄さんに抱き上げられた時点で、ビックリして涙なんか引っ込んじゃったんだけど。 いつまでここに居たら良いのかな…? そう思って、振り返り見つめると、頭をヨシヨシって撫でられる。 う、…うぅん……、立ち上がり辛い。 「ごめんなさいね、遼君。この人昔から可愛い男の子が好きで」 大和お兄さんの奥さん、芽衣お姉さんが困ったようにふんわり笑う。 「あっ、ご、ごめんなさいっ!俺、旦那さんの膝に…っ!」 「ああ、大丈夫よ。変な意味ではなくてね、庇護対象として、と言うか」 慌てて立ち上がろうとしたら、芽衣お姉さんからも頭を撫でられ留められた。 クスクス笑って、マナちゃん先生に視線を合わせる。 「真中君もね、昔はこの人のお気に入りだったのよ。一也さんに横取りされたって、当時は暫く荒れてたんだから」 えっと、…芽衣お姉さん…? 俺、斗織と付き合ってるからなんとなく分かるんだけど……、大和お兄さんの口元、今ヒクヒクってなってるよね!? 怒りのオーラが静かに立ち昇ってるよねぇっ?! 「しょーがねーなぁ、大和。俺のことも抱っこするか?え?」 マナちゃん先生やめてっ! 怒りに拍車をかけないでーっ!! 「27のお前にゃ興味ねェよ、おっさん」 「えー?この前、大学生か?とか言ってたくせに~」 「久し振りに脳天に雪だるま作るか?マナ」 「要らないです大丈夫ですすみませんでしたーっ!!」 ───!! マナちゃん先生が土下座した!! ……って、雪だるまってなんだろう…??

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