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第246話 涙の理由

「あ、……あの」 芽衣お姉さんの出してくれたお茶とお菓子を頂いて、「熱くねェか?」って頭をヨシヨシ撫でられて、 あ、この撫で方、斗織と似てる。なんて思ったりもした……んだけど。 やっぱり、匂いとか、抱き方とか、色々斗織と違って。 他の人に抱っこされてることもそうだし、気にして見てくる視線や、俺重くないかな、とか。 どうにも落ち着かなくて、とうとう堪え切れなくなってきた。 「大和お兄さん」 振り返って呼び掛けると、表情を緩めてくれる。 だけど、 「俺、斗織の所に行きたいです」 「駄目だ。あいつはお前を泣かしたからな」 眼力を強めて、却下された。 「あのっ、でも、あれは斗織の所為じゃなくてっ」 「なら、どうして泣いたのか、言えるか?」 「あの……、それは、……真衣ちゃんが…可愛くて……」 可愛くて、女の子で、斗織にとって大切で、特別な子で───なんて言える訳もなくて、言葉に詰まって思わず黙り込んでしまう。 大体、そんな事を真衣ちゃんのお父さんに言っても斗織のこと困らせちゃうだけなのに…。 もしかしたら、俺の為にって動いてくれたこと、全部ダメにしちゃうかもしれない。 「ごめんなさい!あのっ」 「真衣が可愛いくて、感動したか!」 唐突に声を張り上げた大和お兄さんに、下げた頭をゆるりと上げる。 「可愛いだろ、うちのガキは。だが真逆、感動で泣くほど可愛いとはな」 満足そうに笑うと、俺の頭を撫でてくれる。 それに対して違うと否定することも出来ず、本当のことを話すわけにもいかず、俺は曖昧にやんわりと笑ってみせた。 「なら遼、ちょっとあいつらの相手してきてやってくんねェか?」 「え…?」 あいつらって、大和お兄さんの子どもたちのこと…? 「あ、あのっ、俺、あんまり子供と遊んだこと無くってっ」 「マナ、ついてってやれ」 「はいはい」 子供たちとどう接したらいいか分からないからお断りしようとしたのに、マナちゃん先生に「リョーくん、行こうか」なんて手を差し出されたら、断るに断れない。 俺はマナちゃん先生に手を引かれるまま、子供部屋へと足を進めたのだった。

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