249 / 418

第249話 お姉ちゃんの理由

子供部屋に入るなり、斗織が真衣ちゃんをだっこした。 それが余りに自然に見えて、 どうして斗織の腕の中にいるのが俺じゃないんだろう……なんて、浅ましくもそう思って。 ああ、俺は今、ここに居ちゃいけない。 幸せな叔父と姪っ子達の空気を壊す。 気付いて、部屋から逃げ出した。 閉じたふすまの向こうに「失礼します」と声を掛けて、さっきまでの部屋に戻る。 中では大和お兄さんと、奥さんの芽衣さんと、本当になんで此処に居るのかお姉ちゃんが談笑してた。 「どうしたの、遼ちゃん?」 「斗織君が行かなかった?」 俺に気付いたお姉ちゃんと芽衣お姉さんが、心配そうに訊いてくる。 大和お兄さんは和やかな雰囲気を一瞬のうちに消し去り、 「斗織がなんかしやがったか?」 低く唸るような声を発した。 「あっ、ううん!違うんです!」 斗織が怒られちゃう! 芽衣お姉さん曰く、大和お兄さんは俺みたいな可愛い(可愛い…かなぁ…?)男の子が好きだから、 あっ、変な意味でじゃなくてね!←ココ重要 もしかしたら勘違いして、一方的に斗織を叱りつけちゃうかもしれない。 慌てて首を横に振って、そうじゃないのだと勘違いを正す。 「俺が勝手に邪魔になっちゃいけないと思って、戻ってきたんです」 「邪魔になるようなことしてたのか?」 「えっ…と、征二くんと勉強してました」 「あら、そうなの。ありがとう、遼くん」 芽衣お姉さんがお礼を言ってくれるけど、…俺、途中で投げ出してきちゃったし……。 「いいえ、ごめんなさい、最後まで見られなくて」 申し訳なくて頭を下げると、大和お兄さんがその頭をそっと撫でてくれた。 「で、どうだ、うちの長男は。優秀だったろ?」 「はい。征二くん、習ったところは全部理解してるって。だから予習をしてたんですけど、ちょっと教えるとすぐに理解出来ちゃうんです。俺、なんにも役に立たなくて」 「んな訳あるか。ありがとうな」 「いえ」 大和お兄さんが笑ってくれたから、俺も笑顔で首を振った。 「うちの遼ちゃん、成績もいいんですよ~」 「可愛くてお料理上手でその上賢いなんて、斗織君はいいお嫁さんをもらったわね」 「あっ、芽衣さん、まだお嫁には行かせてませんよ。遼ちゃんはまだまだお姉ちゃんの可愛い遼ちゃんでいてくれるんだもんね」 「………」 そうだ。お姉ちゃんを忘れてた。 抱き着いてこようとするお姉ちゃんを制して、溜息をこぼす。 「なんでお姉ちゃんがここに居るの?」 「え?なんでって、私の方が先に大和先生と知り合ってたし」 「だからって、お宅までお邪魔する程仲良くなるなんて、……え?大和先生って……」 それって、病院での呼び名? だとしたら、お姉ちゃん……まさか───!! 「何処か悪いの!?病気なの!?」 病院にかかる程の怪我をしたなんて聞いたことがない。 それに、斗織のお祖父さんの病院は、大病院だって。 ただの風邪ぐらいで、そんな所にかかるはずがない。 だから、もしかして何か俺に言えないような病気を抱えているのかと問いただせば、 「あははっ、無い無い。お姉ちゃん超元気!」 力こぶを作って見せてくれた。 「デザインの仕事でね、病院に使ってもらってるの」

ともだちにシェアしよう!