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第250話 条件

お姉ちゃんの話によると… 歴史ある中落相中央病院。 うちから斗織の家を通り越した先、歩いていける場所にあるらしい、大きな私立総合病院。 そこが羽崎家の経営する病院らしい。 最近、看護師の制服が古臭いと若い看護師達に不評なことを知った看護師長が、院長に直談判。 新たなデザインで制服を作ることになった。 そして折角なら、デザイナーに依頼して院オリジナルデザインのものにしようとなり…… 「機能性が良くてデザイン性もあるもの。更には20代から50代、男性から女性までもが似合い、清潔感を感じさせながらもスタイリッシュな物、でしょ。並のデザイナーにデザインできるシロモノじゃないわよ。  そこで、お姉ちゃんに白羽の矢が立ったって訳。ね、遼ちゃん、すごい?褒めて?」 頭を差し出してくるから、すごい、偉いと撫でてあげる。 「でも、それと大和お兄さんと…」 「あっ、それはね、斗織くんに会った翌日。遼ちゃんに電話したでしょ?斗織くんのお父さんのお仕事は?って。  あの日ね、病院にサンプルを見せに行く日だったの。それでね、そう言えばこの病院、羽崎って苗字の先生が多いなって思って」 それで、やっぱり羽崎姓の看護師長に訊いてみたらしい。 自分の弟の友達に斗織くんって子が居るんですけど、ご存知ですか?って。 結果、看護師長さんは斗織の父方の伯父さんの奥さんで(ってことは、そーすけさんのお母さんだ)、丁度休憩してる姿を見たからって、大和お兄さんを紹介されたそうだ。 でもね、だからって、家まで遊びに来られちゃうお姉ちゃんのコミュ力。最強だと思う。 「お姉ちゃん、遼ちゃんのことすっごくオススメしたのよ。家事全般得意で、父さんの世話を逆にしちゃうくらいしっかりしてて、成績も良いし、優しくて、可愛くて、気が利いて、」 「はいはいっ、ありがとう!もういいからっ!」 黙って聞いてたらどんどん褒め言葉が発されて、それは留まることを知らなくて…。居た堪れなくなった俺は慌ててお姉ちゃんの言葉を制した。 「で、うちの遼ちゃんはどうですか?大和先生?」 「っ───!?」 余計な事訊かないで───!! 「あー?そうだなァ…」 お兄さんも律儀に答えないで!! 「遼が今から言うことを承知すれば、味方になってやらねェこともない」 「えーっ、条件付きですかぁ?」 「当然でしょう?沙綾先生。労無くして得るもの無し、ですよ」 不満気な声を発したお姉ちゃんを、大和お兄さんが鼻で笑う。 でもね、その方が解かりやすくて良いかもしれない。 俺は人に気に入られる方法なんて分からないから、条件を提示された方が助かる。 その条件に、真摯に向かい合うって言う道筋が出来る訳でしょう? そうすれば、俺がやるべき誠意の示し方も自ずと見えてくる筈。…と思う。 黙って見つめて出される条件を待っていると、大和お兄さんは芽衣お姉さんに手帳を持ってくるように指示した。 渡された手帳をパラパラとめくり、「再来週だな」と誰に聞かせるでもなく呟く。

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