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第253話 ごめん

2階の子供部屋に続く階段の陰で、斗織は足を止めた。 振り返って俺を見つめて、何を言われるのかと心臓をバクバクさせながら見上げていると、 「…頼むから、普通の顔してろ」 自分の額に手を当てて、よくわからないことを言ってきた。 「普通の顔です」 変な顔してないもん、と口を尖らせると、ははっと笑って、唐突にぎゅむーっと抱きしめられる。 斗織がそうする理由は分からないんだけど、すぐにやめて欲しくは無くて、自分からもその背中に手を回してぎゅっとしがみついた。 「……悪かったな。ごめん」 「え?」 「ごめん」 何を謝られてるのかはまったくの不明だけど、斗織が「ごめん」なんて言うの、初めて聞いた気がする…!! すごい……、貴重だ。 しかもなんだか、ちょっと弱った声出してて、縋りつくような抱き着き方だとか、不安げな吐息だとか、もう………すごくかわいい!! えっ、えー…どうしよう、コレ。 今日は斗織が受けなの?俺に攻めて欲しいの? ど、どうすれば……。俺、斗織が望むように攻められるかなぁ。 ん、と、まずはちゅーから?斗織にキスされると俺、いつもすぐに気持ちよくふわふわ~ってなっちゃってどうされてるのか考える余裕もなくなっちゃうんだけど……。 だから、どうしたら俺みたいに斗織も腰砕けになってくれるキスが出来るか、全然分からない。 見切り発車…で構わない? 唇を重ねれば、気持ちよくなれるよう勝手に動ける…かも? 「とおるぅ」 背中に回していた手を首にずらして、背伸びをする。 「遼?お前、また何処でスイッチ…」 「んっ」 スイッチとか、どうでもいい。 余計なことを言ってる口をチュッて音をさせながら塞いだ。 一旦唇を離して。 「ね、ちゅーしよ」 もう一度顔を寄せると、斗織の唇をぺろりと舐める。 それから、口の右端、左端、下唇に押し付けて、動揺して開いたその先に舌を忍ばせようとすると、 「っんぅ」 頭の後ろを強く押さえ込まれた。 お尻に手を這わされ、力が抜けたところをしゃがんだ膝の上に跨いで座らされる。 熱い舌が口内をなぞっていく。 「んっ、…ぁっん、んぅ…」 結局俺は主導権なんて握れずに、斗織の舌で蕩けさせられちゃう。

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