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第255話 いつも
「お兄ちゃん、お蔭で仲直り出来ました。ありがとうございました」
「おう、よかったな」
実の弟が怯えに怯える鬼と呼ばれるその人は、だけど弟の恋人の俺には優しくて不思議。
フッと微笑うとやんわり頭を撫でてくれる。
斗織はピキーッと固まったまま、目だけがフラフラと不安げに彷徨っている。
「斗織の部屋行くのか?」
「はい」
訊かれて答えれば、お兄ちゃんの後ろの方から「きゃーっ」と甲高い悲鳴が聞こえてきた。
……お姉ちゃん、恥ずかしいからよそ様の家では、やめよう?
「斗織!」
「はいぃっ!」
……だからお兄ちゃんも斗織もさぁ、どうして2人とも急に違う態度になっちゃうんだろうね。
「ヤんならちゃんと避妊はしろよ」
「っ!?………はい…」
ニヤリって、俺に向けるのとは違う笑みを浮かべる兄と、目を逸らし気まずそうに返事する弟。
「お兄ちゃん!」
「おっ、おう、なんだ?」
いい加減怯える斗織が可哀想で、俺が言い返すことにした。
生意気って思われちゃうかもしれないけど。
「斗織はいつもちゃんとゴム付けてくれてます。それに俺、女の子じゃないから妊娠はしません。安心してください」
「…あー……、いつも、な」
「いつもです!」
毎回って意味で頷いた俺は、全く気が付いていなかった。
お兄ちゃんが、『いつもそう言うことをしている』と言う事実に気付いてニヤリと笑った、なんてことには。
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