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第256話 いじめ、かっこ悪い

それから2人で斗織の部屋でいちゃいちゃ……なんて出来る訳もなく。 結局俺たちはなんとなく気恥ずかしくなって、大人しく初めに通された部屋へと戻った。 斗織はやっぱり少し居心地悪そうに、ピシッと背筋を伸ばして座ってる。 いつも姿勢の綺麗な斗織だけど、それとは違う、まるで背中に真っ直ぐな棒でも入れられたみたいにカチンコチン。 「遼、なんか食うか?芽衣、沙綾先生から頂いた羊羹と、何か他にもあるか?」 「はい。美味しいカステラもありますから、用意しますね」 「あっ、いえ、そんな、…お構いなく」 俺、お兄ちゃんに気に入ってもらえたのかな…? 「イヤだわ、大和先生。遼ちゃんは何か食べたいんじゃなくて、斗織くんに食べられちゃいたいんですよー。それにもうすぐお暇しますから、芽衣さん、羊羹とカステラはご家族で頂いてくださいな」 お姉ちゃん!何余計なこと言ってんの!? ここにいる腐属性、お姉ちゃんだけなんだからね!! 「ん?そう言やァ遼、お前本当に斗織でいいのか?」 ほら!お兄ちゃんが俺が男だってことに疑問を感じちゃった!! 「あのっ!俺、斗織でいいんじゃなくて、もう斗織じゃなきゃダメなんで!…お兄ちゃんっ」 必死の思いで呼べば、優しい目をして「どうした?」と訊いてくれる。 だから俺はその瞳に甘えて、 「もう斗織のこと、いじめないであげて下さい!」 叫ぶと同時に、思い切り頭を下げた。 「はっ?りょ…遼!?」 斗織は動揺して中腰に、 室内はシーンと静まり返るけれど……。 口に出しちゃったからには、俺だって簡単には引けない。 頭を下げ続けて下げ続けて……… 「……プッ」 堪え切れず吹き出した声に、キッと鋭くした目を向ける。 お姉ちゃん!───と叫ぼうとした口が、 「いや、悪い悪い」 襖の開く音に止められた。 え?襖……? 金箔も眩しい龍の模様の入った襖がスーッと開くと、姿を表したマナちゃん先生が「はははっ」と可笑しそうに口元に手を当てているのが見えた。 「リョーくん、もっと言ってやれ!斗織と真中先生に暴力振るうなーってさ」 あ……、マナちゃん先生だったんだ、笑ったの。お姉ちゃんじゃなかったんだ…。 責める前でよかった。

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