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第258話 迎えの車

2階の子供部屋から下りてきてくれた征二くん達にも手を振って、良く分からないままにお姉ちゃんの後に続く。 お姉ちゃんは先導を切って歩いているけど、途中斗織から、「そこ右です」と逆に曲がろうとしていたところを止められていた。 斗織もお兄ちゃんの支配する、鬼の棲み処…だっけ。そこから出ることが出来てやっと通常に戻った、って感じ。 白い庭石を踏みながらお姉ちゃんが、 「ちょうど着いたって」 スマホを確認すると振り返って、楽しそうに笑った。 楽しそう………ううん。なんか企んでる顔。 「誰が着いたの?」 「迎えの車~」 ほら、全然教えようとしない。 「お姉ちゃんの彼氏?」 「お姉ちゃんは今フリーです。仕事とBLが恋人です!」 仕事はともかく、BLは恋人じゃないと思うよ…。 「ほんとーっに、斗織も一緒でいいんだよね?」 「勿論よ。別に置いて行ってもいいけど」 「だめっ!!」 「冗談冗談~」 ホントは俺も、初めて来た斗織の家(の敷地内)と初対面の下のお兄さん相手に、すっごく緊張してたんだから。 そんな冗談に付き合っていられる精神力、残ってないんだからね! お姉ちゃんの弾む足取りをジトリと睨みながら歩を進める。 閉じられた門の脇の小さめの出入口を斗織が開けてくれるから、そこから表へ出ると─── 「………なんで…」 そこには見慣れた黒のセダンが一時停車していて、お姉ちゃんが走り寄れば開いた窓から本当に見慣れた、毎日見ている顔が覗き、 「デート中にごめんね、斗織君。遼司も」 申し訳なさそうに、困ったように笑ったのだった。

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