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第263話 ちょろい男

来年度、4月から翌年3月まではほぼ決まっていることだから仕方ない。父さんは今の会社で1年転勤、地方での仕事を全うして、再来年。俺が順当にいけば大学に入学する年。 母さんの会社に転職、東京へ戻ってくることに決めた。 母さんの会社でも、今と似たような仕事をするんだって。でも、転勤はなくて、ずっと都内で、あっても地方出張くらいなもの。 そして、そのタイミングで再婚。もう一度、4人での生活が戻ってくる。 「だから遼司は都内の大学を受けなさいね。斗織は何処行くかもう決めたの?ラブラブなら一緒のとこ行っちゃえば?」 母さんも、斗織のことを気に入ってくれたみたいだ。勝手に呼び捨てしてるのは少しむかつくけど。 男同士であることも気にしないみたい。 「うちの業界そう言うの多いもの。あっはっは」 相変わらずの豪快さで高らかに笑う母親を見て、ちょっとだけ、…ちょっとだけね、この人の息子で良かったなぁって思った。ちょっとだけ。 食べきれないほどの料理とケーキ、母さんとお姉ちゃんにはロゼ・シャンパン、俺たちにはブドウジュースを、父さんにはノンアルドリンク。 俺の誕生日兼クリスマス兼、斗織の歓迎パーティーは、主に母さんとお姉ちゃんが大騒ぎし通しの楽しい雰囲気のままに終了した。 駐車場まで送ってくれると言う2人に遠いからと断って玄関で別れ、父さんの運転する車で家まで帰ってきた。 再来年から一緒に住むなら、もっと早く玄関にたどり着けるマンションがいいなぁ。 タワマン、カッコいいかもしれないけど、ビルが見えてからの道のりがひたすら長い。 あんなん毎日やってたら、疲れちゃいそう。 まあ、居住者用の駐車場はビルの下にあるらしいけどさ。 「つっっかれた~っ」 部屋に着くなりベッドにダイブ。 「遼司、コートは脱ぎなさい」 「はぁい、おねがいしまーす」 父さんが手を差し出してくれるから、今日ぐらいは甘えてもいいよね、って脱いだコートを渡す。 「斗織君も脱いだコートこっちに貰える?」 「ありがとうございますっ」 斗織、やっぱり緊張したかなぁ? 恐怖の権化のお兄ちゃんに、初めて会ううちの母さん、それにうちの家族にたった一人囲まれて、緊張しない方が嘘だよね。 「斗織、今日はありがとう」 ベッドから飛び下りて、頭を思い切り下げながらお礼を言った。 「ん?いや」 優しい手つきで頭を撫でてくれるから、顔を上げて目線を合わせる。 見上げてにっこり微笑むと、柔らかく笑い返してくれた。 嬉しくて、もう一度「ありがとう」って、ぎゅっとその胸に抱き付いた。 「遼っ!?」 っ……もう、なんで引き剥がそうとするかな! 「好き。だから、離そうとしちゃだめーっ」 「いや、駄目じゃなくて」 「こら遼司、斗織君を困らせたら駄目だろう」 頭にコツンって指の背が当たる。 見上げれば、自分の方が困ってるみたいな顔の父さんが苦笑してる。 「お風呂溜まってるみたいだから、2人で入っておいで」 「えっ!?」 「はぁい。斗織、行こう」 聞こえた斗織の困惑の声は気のせいってことにして、その手を繋いでぎゅっと引っ張った。 だけど斗織はへの字眉で俺を見下ろし、足を進めようとしない。 困った人だ。 「斗織、行くよ」 背伸びしてチュッと唇を押し当てると、その体から力が抜けて、引かれるままに動き出す。 斗織ってば、案外ちょろい? 大丈夫かなぁ、この人。俺以外の人に誘惑されちゃわない? 一抹の不安を抱えたままに、脱衣所に誘導、動かない斗織の服を脱がしてみる。 ベルトがカチャカチャと音を立てたとき、漸く斗織はハッと意識を取り戻し、慌てて俺から見えない向きに前半身を逸らして、そっとズボンを下におろしたのだった。 って、乙女か!!

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