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第265話 惚れてるシチュエーション
【リューガSide】
別に部屋に立てこもってた、って程 放っておかれてた訳でもないんだけど。
正直、音しかしねーし返事もそっけねーし……。
冷たくね? オレに対して。
だからか。理由はよくわかんないんだけど……
「1人にしてすみませんでした。淋しかったですか?」
級長が出てきた途端、なんでかホッとした。
……つかさ、数回は遊びに来てるとは言え、フツー友達放って別の部屋に立てこもるか?
1人で慣れない他人の家じゃ、落ち着かねーっつーの!
「寂しいし、腹減ったし、飾り付け終わったからやることなくてつまんねーし」
「素直ですね」
「は?」
なんでか頭をヨシヨシって撫でられる。
「別にオレいつも素直だし、褒められることでもねーだろ」
「いえ、褒められることですよ」
眼鏡の奥の目が優しく細められて、口元は嬉しそうに緩む。
まあ…な。オレと話しながらそんな楽しそう? にされれば、悪い気はしねーし。
級長は時々ヘンタイになっけど、基本優しいからキライじゃねーし。
「何が食べたいですか?」
「んー、チキン」
答えれば、級長は更に嬉しそうに微笑う。
「実は、ターキーを用意しておきました」
「ターキーって、クリスマスに食うチキンより高い鳥のやつ? 明日の分じゃなくて?」
「はい、七面鳥です。大豆田君と2人で食べたいと思って用意したので、今晩頂きましょう」
「マジで!?」
「1人にさせてしまってすみませんでした。僕の用事も終わりましたので、この後はずっと一緒にいて頂けたら嬉しいのですが」
そんなん言われて、優しく頭撫でられて、ヤダなんて言える奴なんかいねーだろ。ヒキョーだっつーの、級長。
オレ、ツンデレじゃねーもん。
「ん、じゃー…さ、大豆田君っつのやめたら、一緒にいてやってもいい」
でも、一緒にいたいって言ってやるのも恥ずかしくて、条件なんつーもんを出してみる。
一緒にいてやっても…つのは、せめてもの照れ隠しってーか…。
「おマメとお呼びすれば?」
キョトンって顔で、級長マジボケか!
「ちげーし! リョーちんもひろたんも、リューガって呼んでんじゃんよ!」
「なるほど。では、僕のことも陸翔 、と呼んでください」
オレのことは呼ばないままに、自分もと求められた。
なんか、ズルくね? 級長。
………あ~~っ、……まーいーや。
「リクトな。リクト! リクトリクト~っ! ほら、お前も呼べ、リクト」
相手が嫌がるぐらい連呼してやって、オレのことも呼べと求めれば、
「竜臥」
リクトは嫌がる素振りひとつ見せず、ふわっと微笑みながらオレの名前を呼んだ。
「お、…おう」
しかもイキナリ呼び捨てとか、リクト、イケメン度高くねーか?
名前呼び捨てとか、オレ…家族ぐらいだし……。
「では竜臥、夕食の用意をするので、手伝って頂けますか?」
「う…ん……」
手ぇ差し出すし、なんか視線が…慈愛のまなざしか! っつーぐらい優しいし…
呼び捨てと敬語の取り合わせが、マンガん中の紳士っぽいっつーか……
いつまでも動かないオレに痺れを切らしたのか、リクトは手を伸ばすとオレの手をスッと掴んで、繋いだまま歩き出した。
……いや、……いやいやいや、何オレちょっとドキドキしてんの!?
確かにこれ、オレが女だったら惚れてるシチュかもだけどさ!
───って、シチュだけシチュだけ! オレは惚れねーっつーの!!
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