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第268話 待ち合わせ
俺はちょっと小走りで、斗織は同じ速度だけどうらやまし~い長い脚を活かして早歩きで、駅まで急いで丁度出るところだった電車に飛び乗った。
空いてる電車内、座って息を整える。
それから景色を見ながら他愛ない話をしながら暫く。学校の最寄り駅、級長の家のある駅に着いた。
遅れてはいないけど時間ギリギリ、1分前。
でも、ひろたんは早めに着いてそうなイメージだし、中山も前に待ち合わせた時5分以上前に来てた。
待たせちゃったかな?
今日の用意、全部昨日のうちに済ませておいてよかった。
まさか、朝からギリギリまでイチャイチャしようなんて思ってなかったけど、パーティーのことが楽しみで、「服はこれ、バッグはこれ!」って持ち物に至るまで、昨夜斗織にどれがいいか聞きながら決めておいたんだ。
だから今日の俺は頭(帽子)からつま先に至るまでぜ~んぶ斗織の好みで、更に手首には斗織からもらった腕時計の皮を被った手枷付き。
斗織の選んでくれた帽子とコートは、どっちも白くてフワフワしてる。
中はオフショルダーの薄いブルーのふわふわニットに、ブルーのタータンチェックのパンツ。
あっ!靴下とパンツは自分で選びました!
……でも。
本当は斗織もこういうの着たいって思ってるのかも。
だってこれ、斗織がいいなって思ったものをチョイスしてくれたんだよねぇ。
自分で似合わないと思うから着られないのかな?
黒の斗織、すごくカッコいいけど、白のふわふわだって………うぅ~ん…。
斗織はふわふわじゃない方がいいかな。
改札を出て見渡すと、ちょっと離れたところにひろたんと中山の姿があった。
「ひろた~ん、お待たせー」
斗織の手を掴んで走り寄ると、振り向いたひろたんは「おはよう」と少しほっぺを赤くしてはにかむ。
「おはよ、ひろたんっ」
ひろたんは今日も可愛い!
ショート丈の赤いダッフルコートに、白のボンボン帽子を被ったひろたんは、そこら辺の女の子よりずっと可愛い!!
この可愛さを、8ヶ月も同じクラスにいてスルーしてたなんて、なんて勿体無いことをしてたんだろう。
女の子の言う、「可愛いって正義!」って言葉が理解できたの、ひろたんと知り合ってからだもん。
「あ、あの?柴藤、俺もいるけど」
気付かれていないと思ったわけじゃないだろうけど、焦った様子の中山がちょっと可笑しくて、俺は笑いながら斗織を見上げる。
「おはよう、高原。高原、遼、俺、で全員揃ったな。じゃあ行くか」
ニヤリと笑うと、繋いだままの俺の手を引いて歩き出す斗織。
俺も慌ててひろたんの手を攫ってそれに倣う。
「って、お前ら俺が居なきゃ嵯峨野の家まで行けないだろーっ!?」
中山が騒ぎながら後を追いかけてくる。
「あははっ、ごめん。おはよう、中山」
休みの午前中から元気だな。流石体育会系。
「なんだ、いたのかお前」
斗織はまだ中山のことをからかうつもりのようで、不機嫌に眉を顰めて見せる。
それから、俺と繋いだ左手を見せつけるように差し出し、コートの袖を捲った。
ひろたんと繋いだ俺の手も中山の目の前にグイッと差し出して、俺のコートの袖も捲る。
「………は?なに?」
「おそろい」
俺が着けたのと斗織の手首にあるもの、二つの時計を見せつけると、目を丸めた中山にひとこと。
ドヤ顔をする斗織の言葉遣いが、なんだか可愛い。
「わっ、いいなぁ。ペアウォッチ?素敵だね、りょーくん」
「うんっ、昨日斗織がくれたんだ」
褒めてもらってすごく嬉しい。にこにこして目もキラキラで、本当に素敵だって思ってくれてるんだろうなって。
それに、斗織はお揃いを自慢したかったのかな?って思うと、すっごく愛しい。
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