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第269話 意外と紳士

「あっ、そうだ。Limeでも送ったけど、お誕生日おめでとう、りょーくん」 「ありがとう、ひろたんっ」 …と、フッと隣で笑う気配。 「俺は日が変わった直後に祝った」 またさっきのドヤ顔してる。 「そうなんだ。りょーくん、優しい恋人でよかったね」 「うん」 それからひろたんはついと俺に顔を寄せると、小声で話しかけてくる。 「あの、…気を悪くしたらごめんね。羽崎くんって怖そうだと思ってたんだけど、…結構、可愛い人なんだねっ」 「うん。斗織、優しくて可愛いよ」 「はぁっ!?どこが!!」 折角ひろたんと楽しく会話してたのに、中山の大声で遮られた。 非難の目で見つめると、「ごめんっ、でも…いや、ごめん!」って謝られたけど。 「遼」 不意に斗織が足を止めた。引っ張られて足を止め、手を繋いだままだったひろたんも立ち止まる。 「マメに電話して迎えに来させるから、ちょっと待ってろ」 「え?うん…」 中山が級長の家までの道を忘れちゃったのかな?と頷くと、ひろたんにつんつん、と手を引かれる。 「あのね、羽崎くん、中山くんのこと居ないことにしようとしてるんじゃないかな?」 困った顔の内緒話。 「ええっ!?斗織大人げない」 「遼、なんか言ったか?」 ほんとに大人げない。俺にまで怖い声出しちゃって。 ひろたんに、ちょっと待っててね、と断って、脇道に入り周囲を確認する。 引っ張ってきた斗織の両肩に手を掛けて、じっと見つめ上げる。 「今日は皆でパーティーです。俺ね、友達の家でパーティーとか小学校の時以来だから、すっごく楽しみにしてるんだ。楽しみたいの。分かる?」 「ん…、まあ…」 なんだよその返事は。歯切れの悪い。 「だから、皆と仲良くできないなら、パーティーに連れて行ってあげません。中山と仲良くないの知ってるけど、ケンカ売ったりしないで、おねがい。俺、斗織と一緒に行きたいよ」 情に訴えるような言い方だけど、仲間内には仲良くしてほしいって気持ちは本当。 目を逸らさずに答えを待っていれば、斗織はフッと表情を弛め、俺の頬に掌を添えた。 「なら、ケンカ腰になりそうになったらお前がキスして止めろよ」 「は?…なにそっ、ん…っ」 顔を傾けた斗織の唇が、荒々しくぶつけられた。 さっきまであんなに激しく求めあってた筈なのに、もう出ないからってあれだけ懇願してたのに、 下唇を甘噛みされて、舌を差し入れられただけで下半身にズクンと熱が集まる。 「アイツ、前からお前に馴れ馴れしくてムカつくんだよ」 呼吸の合間にそんなことを言われたら、好きにさせてあげたくなる。 気持ちいいし、斗織は可愛いし、こんなとこでされちゃうのはちょっと困る。けど……斗織が放してくんなきゃ、もう止まんないじゃぁんっ。 「ごめん、おまたせ」 説得の為に待たせてしまった2人のいる道へ戻ると、 「りょーくん、どうしたの!?だいじょうぶ!?」 目尻に涙を滲ませた俺に気付いてひろたんが駆け寄ってきてくれた。 「大丈夫……だけどちゅーされたぁ。う~~、うずうずするよぅ」 「え…っ!?」 「だからね、エッチなキスされちゃったから、お尻が…」 「柴藤っ!!」 突然名前を呼ばれたと思ったら、ひろたんの耳を両手で塞いで必死に首を横に振る中山の姿が。 「高原にエロいこと聞かせないで!」 そして、耳を塞がれたひろたんは、顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。 付き合って3日目。2人はまだ、キス以外何もしてないのかな? 俺、2日目に早速手コキされたんだけど。 中山って、意外と紳士?

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