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第270話 級長の家

級長の家は大きめの一軒家。 勿論、斗織やリューガくんのお家みたいに武家屋敷サイズな訳じゃないけど、小型犬なら充分に走り回れそうな広さの庭もある。中型犬でもいけるかな。 白い門に白い壁、赤い屋根と花壇のポインセチアが差し色になってて綺麗。 門の一方に絡んでるのは薔薇の木? 暗い時に間違えて刺に触っちゃったら痛そうだけど、花の季節は綺麗なんだろうなぁ。 一階一階が広いのに、二階じゃなくて三階建て。 中にはエレベーター完備。 玄関もフラットになってて、家を建てる時に歳をとっても住めるようにバリアフリーにしたんだそうです、と級長が教えてくれた。 ちなみに、2階はお父さんお母さんの寝室や書斎がある階で、級長の部屋は3階。 今日は1階でパーティーだけど、3階にもキッチンはあるらしい。 と言うか、トイレや設備はまだ入れてないけれどバスルームのスペースもあって、ご両親は級長が結婚したら二世帯住宅として使用するつもりなんだとか。 今はまだ使っていないけれど玄関も別にあるんです、だそうだ。 ……でも、結婚って…。 リューガくんは道場継ぐって言ってたし、一緒には住めないよね…… そのリューガくんは、玄関ベルを押せば勢いよく玄関ドアを開けてくれて、 「よおっ、リョーちん、ひろたん、待ってたんだぜ!!」 2人纏めて抱き付くと言う形で、豪快に迎え入れてくれた。 「トオルと中山も、遅かったな」 こっちの纏められた2人は2人とも複雑そうな表情(かお)をして、だけど俺が「ケンカを売らないで」と懇願したためか、斗織は口を真一文字に引き締め言葉を発するのを堪えているようだった。 いいこ。 級長が、パーティー会場です、と招き入れてくれた洋室は、リボンや造花で綺麗に飾り付けがしてあった。 「すご~い、綺麗だね!」 先に入ったひろたんが感嘆の声を上げる。 「ホントだ。すごいね!2人で飾りつけしてくれたの?」 訊ねれば、 「いや、ほとんどオレ!」 リューガくんがドヤ顔をして自分を指さした。 「リョーちんの誕生日の祝いも兼ねてんだからな。ちょー気合入ったぜ!」 「っ……りぅがく~ん!」 感激のあまり抱き付こうとしたら、背後から羽交い絞めにされた。 「お前が抱き付くのはこっち」 ……まったく、大人げないんだから。 リューガくんは俺とおんなじ属性なんだから(←級長の悪影響)、全然問題ないってのに。 言ったら、斗織が級長や中山に抱き付いてるのとおんなじだもん。 ……………まあ…、俺もちょっとは焼くかもだけど…。 もういい加減慣れたのか、リューガくんが斗織を見ながら苦笑して、それから俺に全開の笑顔を向けてくれた。 「リョーちんならぜってー喜んでくれると思ったんだ。ありがとな!」 努力したんが報われる、ってリューガくんは言ってくれるけど。 「ううんっ、俺の方こそありがとう!すっごく嬉しい!!」 こんなことしてもらったの初めてで、リューガくんの気持ちが本当に嬉しい。 クリスマスイブが誕生日で良かった、なんて思ったの、生れて初めてだ。

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