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第271話 2人の進展

級長、斗織、中山の3人でソファーやローテーブルを部屋の端に寄せて、ダイニングテーブルを移動させてくれた。 その間に、残った俺たち3人は、冷蔵庫の中とお鍋の中のお料理を盛り付ける係。 皆から集めた食事代の範囲で級長が用意してくれたお料理はどれも美味しそうで…! 特にこのイチゴタルト!! 普通にいちごショートじゃないところがなんかヤラシイ。いい意味で。 なんか、お金持ちのオシャレなおうちの子=え?いちごショートならいつでも食べられるでしょ? って感じ。 フライドチキンを盛り付けてたリューガくんが、不意に「ふへへっ」と笑みを漏らした。 どうしたの?と訊けば、「いや、トオル達にはナイショな」とニヒニヒしながら教えてくれる。 「昨日さ、リクトが2人で食べる用にって、七面鳥のやつ用意してくれてたんだよ!ちょー美味かったの思い出してさ」 「わぁ、いいね。昨日からお泊りだったの?」 「ああ。客用布団出すっつーから、ベッドがいい!つってベッドに寝かしてもらった」 「りゅーがくんのお家はお布団なの?」 「俺んち純和風だからさ、ベッドとかちょー夢の夢。てか、フローリングってカッコいいよな。うちフローリングっつーか床って廊下しかねーし」 2人は何でもないことのように楽しそうに話しているけど…… リューガくん!級長のこと名前で呼んでる!! それに、ベッドで寝たって……ベッドで!一緒に!? 「………っ!!」 ハッと気づいて、勢いのままにリューガくんのお尻をぽん、と叩いた。 「へっ?リョーちん?なに??」 痛くはないみたい。 じゃあ、そう言うのはまだ……? でも!まだ前だけ…だとか。 俺たちだって、始めは前だけだったもん。 「リョーちん?難しい顔して、どした?」 「りょーくん?」 「………はっ!!」 どうやらすっかり考え込んでしまっていたらしい。 2人のドアップに気付いて、誤魔化すようにえへへ、と笑って見せた。 「ごめん、だいじょうぶ」 まだ心配そうな2人に断って、作業を再開する。 まあ、頭の中ではまだ2人の関係が気になって悶々だけど。 「りぅがくん、きぅちょうのこと、名前で呼ぶようになったんだねぇ」 わざとらしくないよう、自然に聞こえるように視線は合わせずに訊いてみる。 「おう、昨日さ、いい加減「大豆田」って呼ぶのめんどいだろーから「リューガって呼べよ」っつったら、あっちも名前で呼べっつっから」 真剣にフライドチキンを盛り付けてるリューガくんも、そこから目を離さずに答えてくれる。 ツリーみたいに重なったチキンのてっぺんに、星代わりのパセリを乗せると、 「うん、カンペキだ!!」 満足そうに腕を組んで笑った。 うん、今日も可愛い。カンペキだ。 でも、表情も変えずにフツーに教えてくれるってことは、2人の進展は名前呼びだけ、ってこと?

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