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第272話 級長お手製の衣装
こっちの用意と、あっちの用意もほぼ同時に終わった。
キッチンカウンターからテーブルへ運ぼうとすれば、級長がそれは自分たちが運ぶからと、紙袋を3つ差し出してくる。
「3人はこちらに着替えてきてくださいますか?」
「着替えって?」
また女装?と少し表情を硬くして首を傾げれば、隣でひろたんもビクリと震える。
「いえ、僕をあんなただのエロいだけのチャラDKと一緒にしないでください」
……うわー…、級長毒舌ー…。
「リクトさ、それ一生懸命作ってたみたいだし、せっかくだから着てやろうぜ。女装じゃねーっつーし」
リューガくんが、でもやっぱりちょっと複雑な顔をして、受け取った紙袋を持ってドアの方へ向かう。
「きぅちょうが作ったの!?」
「ええ。それぞれデザインも違っているんですよ」
「すごい、嵯峨野くん!僕、有り難く着させてもらうね!」
急に嬉しそうにひろたんが笑うものだから、俺も嬉しいって言うか……なんだか有り難い気分になってきた。
「ありがとう、きぅちょう。着替えてくる」
そして俺たちは、級長が眼鏡をクイッと上げるお得意のポーズでニヤリと笑ったことになんか気付きもせずに、リューガくんを先頭に隣の部屋へと着替えに向かったのだった。
「3人とも、思った通り可愛いですよ」
嬉しそうににっこり笑う級長。
黙って俺のことをポスッと抱き寄せる斗織。
顔を赤くしてひろたんのことを鼻息荒く褒めちぎる中山。
……いや、確かにね、俺も思った。
ひろたんもリューガくんもすんっっごく可愛い!!って。
だけどさ、女装じゃないって言ったよね!?
「きぅちょうっ、これワンピース!?」
「嵯峨野くん、おなか…っ」
「リクト~、なんでショーパンなんだよっ!?」
「すみません、用意した生地が足りずに、短くなってしまいました」
「「「うそだーーーっ!!!」」」
赤い柔らかな生地に白いフェイクファーの付いたサンタ衣装。
だけどブーツ以外は三種三様。多分、級長の勝手なイメージでデザインされてる。
俺の衣装は赤い肩出しひざ丈ワンピースに、袖口の広がったアームカバー。
金のベルのチョーカーに、サンタ帽付きの、女の子が着たら可愛いよね!仕様。
ひろたんのは、ベアトップにショートパンツ、ボレロと手袋付きだから寒くない……って言うか、そんな防寒具付けたところで寒いからね。お腹も、腕も肘辺り丸出しになっちゃってるんだから。
まあ、室内はエアコンでぽかぽかだから寒くはないけど、なんだか心許無さそう。
俺のサンタ帽とは異なって、プラス赤いリボンのカチューシャ付き。女の子が……以下略。
リューガくんの衣装は、ショーパンにフード付きパーカーみたいな作りのトップスだけど、ご丁寧にお腹の部分だけひらりと開いて見えるようになってる。
生地が足りなかった割に、萌え袖になってるのがポイント。
まあ、ギリ男が着てもおかしくないかな。
……って!
『女装じゃない』って、級長がリューガくんだけを納得させるために言った言葉なんじゃあ…!?
俺のもひろたんのも絶対!女の子用だと思うんだけど!!
級長もう、母さんの会社に入ってお姉ちゃんと一緒にデザインしてればいいんじゃないの!?
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