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第275話 くすぐったがり

「では、羽崎君に中山君。膝枕してもらって下さい」 「えっ、それだけ?」 拍子抜けして、思わずそう呟いた。 だけど、ひろたんには『それだけ』ではなかったようで…… 「えっ!?…あのっ、それはっ、それはっ…、やらなきゃダメなのっ!?」 中山はすっかりやってもらうつもりでニマニマしてるけど。 「当然です。なんの為の脚出し!なんの為の生脚だと思っているんですか!」 なんの為って、アンタが用意した衣装を素直に着ただけだよ!それ以外のなんの為でも無いよ! 「俺は良いけど、ひろたんは嫌がってるんだから無理強いはやめた方が…」 「えっ!?高原イヤなの!?」 「あっ、ちがっ…!イヤって訳じゃなくて…っ」 「では、どうぞ」 ニコニコして、ほんと趣味悪…いやいや、えぇ~と………面白い思考回路。 太股の両脇にふくらはぎが来るように、足を崩して斗織を呼ぶ。 どうせ、膝枕するまで納得しないんでしょ、級長は。 それに、力仕事してくれた斗織のこと、俺の膝が役に立つなら癒やして労ってあげたいもん。 斗織が俺の膝に頭を預けて寝転ぶと、中山が羨ましそうに俺達を見て、チラッチラとひろたんに視線をやった。 ひろたんは真っ赤な顔をして、ショートパンツの裾を必死に伸ばして太股を隠そうとしてる。 けど、あんまりやり過ぎると今度は上から出ちゃいそう。 既におヘソは丸出しだし。 「あの…っ」 ムリだと気付いたのか、それとも知ったうえでの悪足掻きだったのか…。 ひろたんは漸く諦めたようで、目尻に涙を浮かべながら級長に声を掛けた。 「ぼくっ、すごいくすぐったがりでっ、…だから、その……せめてハンカチを敷いても良いですか?」 「擽ったがり…。なるほど、素晴らしい」 「えっ?…あ、ありがとう…」 級長の「素晴らしい」を恐らくひろたんは「良い考えだ」の意味に捉えたんだろう。 カバンからハンカチを取り出して広げて膝に敷く。 だけど俺は気付いてしまった。 あの人が、 『擽ったがり』=『感じやすい体』 で、「素晴らしい」と言ったことに。

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