275 / 418
第275話 くすぐったがり
「では、羽崎君に中山君。膝枕してもらって下さい」
「えっ、それだけ?」
拍子抜けして、思わずそう呟いた。
だけど、ひろたんには『それだけ』ではなかったようで……
「えっ!?…あのっ、それはっ、それはっ…、やらなきゃダメなのっ!?」
中山はすっかりやってもらうつもりでニマニマしてるけど。
「当然です。なんの為の脚出し!なんの為の生脚だと思っているんですか!」
なんの為って、アンタが用意した衣装を素直に着ただけだよ!それ以外のなんの為でも無いよ!
「俺は良いけど、ひろたんは嫌がってるんだから無理強いはやめた方が…」
「えっ!?高原イヤなの!?」
「あっ、ちがっ…!イヤって訳じゃなくて…っ」
「では、どうぞ」
ニコニコして、ほんと趣味悪…いやいや、えぇ~と………面白い思考回路。
太股の両脇にふくらはぎが来るように、足を崩して斗織を呼ぶ。
どうせ、膝枕するまで納得しないんでしょ、級長は。
それに、力仕事してくれた斗織のこと、俺の膝が役に立つなら癒やして労ってあげたいもん。
斗織が俺の膝に頭を預けて寝転ぶと、中山が羨ましそうに俺達を見て、チラッチラとひろたんに視線をやった。
ひろたんは真っ赤な顔をして、ショートパンツの裾を必死に伸ばして太股を隠そうとしてる。
けど、あんまりやり過ぎると今度は上から出ちゃいそう。
既におヘソは丸出しだし。
「あの…っ」
ムリだと気付いたのか、それとも知ったうえでの悪足掻きだったのか…。
ひろたんは漸く諦めたようで、目尻に涙を浮かべながら級長に声を掛けた。
「ぼくっ、すごいくすぐったがりでっ、…だから、その……せめてハンカチを敷いても良いですか?」
「擽ったがり…。なるほど、素晴らしい」
「えっ?…あ、ありがとう…」
級長の「素晴らしい」を恐らくひろたんは「良い考えだ」の意味に捉えたんだろう。
カバンからハンカチを取り出して広げて膝に敷く。
だけど俺は気付いてしまった。
あの人が、
『擽ったがり』=『感じやすい体』
で、「素晴らしい」と言ったことに。
ともだちにシェアしよう!