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第277話 中山の扱い

斗織が手を上げて、垂れた髪を指先でくるくると玩んでる。 俺もお返しに斗織の髪を指で梳く。 ちょっと硬くて黒い髪。黒曜石みたいに綺麗でサラサラと気持ちいい。 リューガくんは膝枕をするのは諦めたようで、反対に級長の膝に頭を預けてソファーの上に寝転んでる。 ひろたんはそろそろ慣れたのか、絡む指先を中山の好きなようにさせていた。 「そう言えばひろたん、昨日は中山とデートだったの?」 ふと、昨日Limeをしていた時のことを思い出して訊いてみた。 すぐ傍にいるような様子だったから、俺たちと一緒でクリスマス(イブ)デートだったのかな?って。 「ううんっ、デートじゃないよ」 「一緒じゃなかったんだ」 「えぇと、あの時は一緒にいたんだけど…」 困ったように笑うひろたんの代わりに、中山が先を続ける。 「最終の練習試合、見に来てくれてたんだよ。っても、あの時以外は美術部の部室から見ててくれてたみたいだけど」 「だって…あんな女の子いっぱいのところ、応援に行けないよ…」 どうやら昨日はサッカー部の試合だったみたいだ。 …そうだねぇ、ひろたん、怖くて応援に行けないって言ってたもん。 部室からでも見ていてくれてた分、頑張ったんだと思うよ。 俺も、斗織からお茶の教室に参加してって言われても、行ける気がしない。 女の子ばっかりだろうし、何よりあの子に会うのが怖い。 「サッカー部って冬休みでも部活やってるんだねぇ」 えらいえらい、と他人事に褒めていれば、 「はぁっ!?」 ひろたんの心地良さそうな膝の上から、中山がガバリと起き上がった。 「うち、選手権出場だよ!?全国大会だよ!?年末年始めっちゃ本番で試合すんだけど!?Aブロック優勝したんだよ!?」 「えっ、そうなの!?」 選手権?Aブロック…? 「あー…、リョーちん、そういやオレ、校舎になんか垂れ幕下がってんの見たかも」 「あ?そんなん有ったっけか?」 「あったよ!滅茶苦茶目立ってたよ!駅前通りにも横断幕とか旗とかいっぱい飾ってあっただろ、今日も!!」 言われてみれば……、あったような気がする。 うん、あくまで気がするだけだけど。 クリスマスの飾りつけの方が派手だから気付かなかった。 「帰りに見てみるよ」 「別に見なくてもいいだろ。本人が言ってんだから嘘でもねェだろーし」 「嘘じゃないからね?!」 本当に凄いことなんだろう。 全国大会ってことは、都内で一番になったってことだもんね。 Aブロックとかは何のことか分からないけど。 うちの学校って、サッカー部、そんなに凄かったんだぁ。 友達がインハイ出場するなら、全国おめでとうって一緒に喜んで、応援に行った方がいいのかもしれない。けど。 だけど、中山の扱いって、俺たちの中じゃこれがスタンダードなんだよねぇ。 「ふふっ、がんばれ」 「スゲー心こもってねえし!!」 「全国でヘマって同じ学校通ってる俺に恥かかせんなよ」 「あ、そんじゃこんなとこで遊んでちゃダメなんじゃねーの?早く帰ってレンシューしろよ」 「交換用のプレゼントは置いて行ってくださいね、中山君」 「お前らなんでそんな優しくないの!?」 「なっ、中山くんっ、僕はちゃんと応援してるからっ」 「高山~~~っ!!!」

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