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第280話 ひろたんの女子力
ひろたんのプレゼントバッグには、大きめのチューブが2本入ってた。
それぞれに薔薇の花と、桃の実のイラストが付いたもの。
「あのね、何が良いか相談したら、お姉ちゃんたちが、これからは男の子もスキンケアの時代だって言って勧めてくれたんだ。良い香りのボディクリーム」
「ひろたん、お姉ちゃんがいるの?」
「うん。3つ上の大学生と、その3つ上の社会人の2人」
「言われてみりゃひろたん、姉ちゃんの居る末っ子って感じかもな」
うんうん、って頷くリューガくんに同意する。
お姉ちゃんたちに髪結われたり、女の子の服着せられたりしてそう。
…でも、…うん。確かにこれは、斗織向けのプレゼントじゃないかも。
「で、中山のプレゼントってなんなの?」
貰い損ねたプレゼントの中身が気になって訊ねる。
斗織はペリペリと包装紙を剥がすと
「あ、ラーメン」
ちょっと嬉しそうな顔をした。
「そう、それそれ、ご当地ラーメンセット。色んなとこのラーメン入ってるやつ。生麺だからそんな持たねーと思うから早めに食えよ」
「おう」
中山に対して素直に答える斗織。
貴重な姿だ。
プレゼントのラーメン、相当気に入ったのかな。
「ぶはっ、なんだよこれーっ」
自分の当たったプレゼントに吹き出したのはリューガくん。
ビニールバッグから何かぬいぐるみ?を取り出して笑ってる。
「あっ…」
あのビニールバッグ、とおるくんの入ってたのと同じショップのだ。
ってことは、あれは斗織のプレゼント?
「…布に綿が入ったやつ…」
って確か斗織はそんなこと言ってた。
「なんだよコレー」
ぬいぐるみの顔の方をこっちに向けて、皆の前にグルーッと動かして見せる。
グレーの肌に、ツルンとした長い頭。目が大きくて、手足が長くて細い。
「グレイですね」
「だよなぁ。つかなんでコレ、誰コレ選んだヤツ」
「俺」
「トオルかよ!バカだし!」
バカだし…って言うか、まあ…。
1500円掛けてそれ、自分用には買わないよねぇ。
宇宙人。とおるくんと一緒のお店に居たわりに、とおるくんみたいには可愛くないし…。
「でも、愛嬌のある顔してるよ」
「そっかぁ?」
顔の前に向けられたグレイの頭を撫でて笑顔のひろたん。
わかんないって顔して、それを眺めるリューガくん。
俺もグレイの可愛さは分からないけど、…師匠!可愛い男の子たちがグレイで遊んでる姿が可愛いってことは、俺にも分かります!
「あ!そーだ。これ電気の紐に付けよ。前のやつ切れちったんだよ」
グレイの落ち着く場所は、リューガくんの部屋の照明の紐の先に決まったらしい。
グレイの手を引っ張って電気を点けたり消したりする姿は、きっと可愛いに違いない。
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