281 / 418

第281話 ナイショだったのに

「んで、ひろたんのは?」 リューガ君に急かされて、ひろたんもショップバッグを開ける。 中を見て、すぐに笑顔が零れた。 「これ、りょーくんの?」 「うん」 俺からのプレゼントは、昨日買ったティーバッグの缶と、おまけの紅茶クッキー。 「あ、ウバだ!僕、ウバをミルクティーにして飲むの好きなんだ」 「ほんと?じゃあひろたんに当たってよかったぁ。あとね、それは同じ店で買ったアールグレイで昨夜作った紅茶クッキー」 「りょーくんが作ったの?」 「うん。口に合うといいんだけど」 「すごい!売ってるものみたいにキレイだね」 ひろたんのはしゃぐ姿に嬉しくなる。 だって、こんなに喜んでもらえるなんて、作った甲斐があったでしょ。 「お口に合うと良いのですが」 ひろたんは俺の作ったものを食べたことは無いから…。 ちょっと緊張しながら言うと、 「合うだろ。お前料理上手だし、出来たヨメだし」 何故か斗織が自信満々にそう返してくれた。 ほんと、斗織ってば……。俺にベタ惚れすぎじゃない? 「で、嵯峨野に当たったのは?」 中山が思い出したように訊ねると、級長は人差し指を唇の前に立てて、 「ナイショです」 と微笑んだ。 リューガくんが斗織の、斗織が中山の、中山が級長の、で、ひろたんが俺の、俺がひろたんの。ってことは、 「きぅちょうは、りぅがくんの?」 「はい」 「よかったね」 「ええ」 じゃあ、中身は訊かないほうが良いのかな。 独り占めしたいって気持ちが級長の中にあるのかもしれないし。 「あっ、それ、オレの好きな菓子詰め合わせ~」 「……っ!?」 って!リューガくん!? 級長の「ナイショ」って言葉聞いてた!? 「リクト、後で一緒に食おうぜ」 自由なリューガくんに、級長はちょっと苦笑しながら、はいと答える。 ………ま、結局幸せそうだから、それでいいか。

ともだちにシェアしよう!