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第287話 ご褒美

級長は、別名神コメ伯爵とも呼ばれているらしい。 テンションの高いおねえさんの説明では良く分からなかったんだけど、級長のコメントはとにかくスゴイ!らしい。 級長が普段利用しているのは、アダルト向け禁止のBL投稿サイトで、さっきのサークルのおねえさんはそこに投稿してる同人作家さん。 姉妹でサークル活動をしていて、お姉さんの原作を、妹さん(買い物で留守中)が漫画にしているそうだ。 既刊のものはすべてゲット済みらしく、級長は新刊のみ購入した。 表紙のイラストに覚えがあるものがちらほら。 て言うかここ、最初の日に見せてもらった、茶道教室の先生のお話のサークルさんだ…!! 『和装男子図鑑』の人だ! スケブをお願いします、とお姉さんに手土産とスケッチブックを手渡すと、級長は「また後で伺います」と彼女に頭を下げた。 倣って軽くお辞儀をして、サークルスペースの前から移動する。 「ご挨拶と買い物が済んだら、すぐに撤退するのがルールです」 それから級長は島中のサークルを幾つか見て回った。 壁側のサークルには沢山の女性で列が出来ていて、あそこに並ぶのかなと心配になったけど……。 壁は大手サークルで、主に二次のR-18創作が中心です。僕たちにはまだ早いですから見ちゃ駄目ですよ、と笑われて、なんとなく恥ずかしくてそっちを見られなくなった。 だから、島スペースに目を走らせていたんだけど…… 「こちらはアダルト向けですか?」 不意に目の前を塞がれ、足を止めた。 「えっ?…あー、15禁ですけど、……えっと、BL…ですよ?」 級長に声を掛けられたサークルの女性は困ったように眉を下げる。 「はい、心得ています。僕も腐男子ですのでご安心下さい」 「あっ、そうなんですか!ならよかったぁ」 「少し見せて頂いても宜しいですか?」 「勿論です!どうぞどうぞ」 級長が見本を開くと、ニコニコと薦めた筈の女性の顔が、段々と曇っていく。 緊張しているような、不安を感じているような。 「いや、目の前で読んで頂くのって、反応ダイレクトでやっぱり緊張しますよねっ」 視線に気付いた彼女が、縋るように俺を見た。 「しかも相手男性とか!確かにエロはほぼ無いけど~っ」 「あー…、でもきぅちょう…彼は本当にBL好きなので大丈夫ですよ」 「ですか!? でもうち、ほのぼのだし小説だし…」 「ほのぼのも小説も大好物です」 パタンと本を閉じて、級長はにっこりと笑みを浮かべた。 途端、サークルさんの顔が真っ赤に染まる。 「ちょっ、よく見たらとんでもないイケメンさんじゃないですかっ、イケメンにホモ読まれるとかイジメですかご褒美ですか?!」 「ご褒美と取っていただければ光栄です」 …何を言ってるんだろう、級長。 イケメン認めたし、ご褒美とか自分で言っちゃってるし。 「しかもなんですか!?二人揃って綺麗な男子が連れ立って創作BLスペース回るとか、どんなカモネギですか!美味し過ぎですっっ」 「ありがとうございます」 「こちらこそですよ~~っ、ご馳走様ですっ!」 あ、また頂かれた……。 それから級長は、一冊一冊のあらすじを聞いて、気になった本を購入した。 「ひぃー、すみません、こんな!ひーっ」 彼女はずっと恐縮してた。 ここには色んな人がいて、ちょっと面白い。

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