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第288話 秘密ごと
午後4時。
一日目終了の放送に、会場内が拍手で包まれた。
「お疲れ様でした。さあ、帰りましょうか」
至極満足気に微笑うと、級長は俺の手を掴んで歩き出す。
「羽崎君に言ってはいけませんよ」
……そんな風に言われたら、まるで浮気しちゃってるみたいじゃないか。
「はぐれないように繋いでるだけなら、斗織も気にしないと思うんだけど」
会場内はまだまだ混雑してる。
きっと駅も凄い人だろうから、落ち着くまではくっついていた方がいい。
そういう事情がありつつの、相手が級長なら、斗織だって……
「いえ、気にしますよ」
「気にするかなぁ?」
「嫉妬に狂った羽崎君に酷く抱かれたいのであれば、告げることをオススメします」
繋いでない方の人差し指を立てて、瞳をキラキラ輝かせる級長。
「…………内緒にします」
「逐一のご報告を楽しみにしていたんですが」
「しませんっ!」
冗談なのか本気なのか、級長は「残念です」と少し拗ねたように視線を下げた。
* * * * *
結局、買っちゃったなぁ……
級長と別れて数十分後、ベッドに俯せに転がって、持って行ったバッグの口をちらりと開く。
中から覗くフルカラーの表紙には、着物姿の黒髪の男前。
『和装男子図鑑』のサークルさんに2回目に訪れた時、表紙イラストに目が行って……つい手に取ってしまったんだ。
だって、表紙のイケメンがなんとなく斗織に似てたんだから……仕様がない。
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