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第292話 心配の理由
いいか、玄関からは一歩も出るなよ。
俺がチャイム鳴らすまで中で待ってろ。
お前は前科があるから。
なんて、俺の頬をぷっくり膨らませる種をバラ撒いて、斗織は俺にエントランスの扉を開かせた。
前にうちに皆で集まった時。
来られないと思ってた斗織が遅れて合流してくれた、あの時の失態のこと言ってるんだろうけどさ……。
前科、って言い方はヒドくない!?
あの時は中に皆がいたからオートロック掛かっちゃっても平気だったし、俺だってそれを踏まえて飛び出した……んじゃなかったかな………?
………うん、そんな感じ。
とにかく、玄関に座り込んで脚をバタバタ、ほっぺをプクーッてして(怒ってるんじゃなくて)遊んでると、玄関チャイムがピンポンと鳴った。
「っ───はいはいはいっ!!」
即座に立ち上がって鍵を捻ると同時にドアを開け放つ。
「いらっしゃい!」
「……遼………」
見上げた先で斗織は、呆れたような困ったような、矢鱈と大人びた表情を浮かべる。
「相手、確認してから出ろっつったろーが」
「斗織でしょ?わかるもん」
コツン、と頭を小突かれた。
「俺の前にヤバい奴が来てみろ。血塗れのお前と御対面になんだぞ」
「……心配?」
「……そりゃ心配もすっだろ。危なっかしーんだよ、お前は。すぐ泣くし」
「別にすぐには泣かないし!
……でもさ、…なんで俺のこと、そんなに心配なの?」
部屋の中に招き入れて、ベッドに腰掛ける。
両手を広げてコテンと首を傾げると、掲げた掌で髪をくしゃりとかき混ぜて、観念したように小さく息を吐き出し、
「───好きだから、だろ…お前のこと」
欲しかった言葉とぬくもりをくれた。
わざとあざとい可愛さを狙ったのに、相変わらずチョロすぎるよ、斗織。
外でも他の人に落とされたりしてないか、ちょっと心配になるくらい。
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