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第296話 金髪の正体

外国人の知り合いなんていない。 なのに、俺を名指しで声を掛けてくるなんて……… 絶対不審者!! その金髪から庇うようにお姉ちゃんの前に出る。 もしかしたら、俺の名前を呼んで油断させといての、お姉ちゃんのストーカーかもしれないし。 「……どなたですか?」 キッと強い目で睨み付ける。 男は驚いたようで一瞬肩を揺らし、それから眉間に皺を寄せて、自分の頭をくしゃりと掻き混ぜた。 「あー…、もしかして、覚えてない…とか……」 持ち上がった前髪の下から覗いた瞳の色に、違和感を覚える。 金髪の下は当然、碧、ブルー、グレーだったり、色素が薄いものだと思っていたのに。 その目は確かに日本人の持つ黒で。 それに、聞きなれた発音の標準語は、流暢を通り越してネイティブだ。 もしかしたら、外国人ではないのだろうか。 「───溝呂木静馬」 「えっ……」 男───いや、俺と同年代の少年(青年?)が口に乗せた名前に、俺は確かに覚えがあった。 「みぞろき、し・ず・ま!まさかホントに忘れちまってんの?りょーじ」 前髪を上げおでこを見せて困ったように笑う、その顔にも……俺は………… 「っ───まさか、しーくん…!?」 多分俺は目をまんまるに見開いて、彼を凝視してたと思う。 「そっ。お前のしーくん。  ……やっと会えたな、りょーじ」 あんまりにもビックリし過ぎたせいで、伸びてくる手から避けることなんて出来ずに、 気付けばその腕の中に包み込まれていたんだ────

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