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第306話 悪即斬
年末年始のグータラは母さんの家に置き去りにして、今日からしっかり早起きの新年スタート。
父さんの朝食とお弁当を用意して、起きてきた父さんに挨拶する。
今日も寝起きはぽやぽやの父さんは、ぼーっとしながらご飯を食べて、洗面台に引っ込むと、
「それじゃあ遼司、いってくるよ」
「はぁい、いってらっしゃい」
カッコいい大人の男になって、仕事に出掛けて行った。
斗織、何時ごろ来るかな?
今は7時前。流石にまだ来られないよね。
何時に来るのか聞いておけばよかった。
なんとなくソワソワして、洗い物しててもお皿が一回ガシャンと鳴った。
洗い物を終えて手を拭いてると、玄関からカチャリと、鍵を開ける音が聞こえた。
珍しいな。父さん、忘れ物でもしたかな?
「父さん、何か忘れたの?」
ドアが開いて、
「………?」
………だけど、いつもパーテーションの上から覗く黒い髪が見えない。
不審に思い、音を立てずにそーっと近付く。
不審者だったら、悪即斬で倒してやる!
左手にはフライパン。右手には中華鍋。これで挟んでバーン!悪即バーンだ!!
だけど、そろっと覗いた先には………
「はれっ?とおる…??」
「なんだよ、意外と喜ばねェのな」
靴を脱いで玄関から上がる斗織の姿があった………!
「つか、なんで両手に鍋持ってんだよ」
「あ、いや…これは……」
え?あれ?俺、斗織に合鍵渡してた?!
ドアと斗織と、交互に見た俺の疑問にすぐに気付いたんだろう。
斗織はチラチラと手を揺らして、2本の指で挟んだキーケースを見せてくれた。
ブラウンのブランド物のキーケース。それ、父さんのだ。
「下で会ったんだよ」
そう言うと斗織はキーケースを俺に渡そうとするけれど、
俺の両手にはフライパンと中華鍋……
「ちょっと待ってて。置いてくる」
こんな格好じゃ抱き着くことも出来ない。
さっさと両手を自由にして、斗織に思いっきりぎゅーぎゅーしないと、くっつけないストレスで爆発しちゃう。
だから待っててって言ったのに、何故か俺の後についてくる斗織。
ひよこみたいで可愛い!…じゃなくて。
「どうしたの?」
「どうもしねェ」
「今仕舞っちゃうから待ってて。そーだ、何飲む?温かいのがいいかな」
「いや、ミルクでいい」
「牛乳?ホットミルクにしようか」
「牛のじゃなくて、お前のミルク」
「っ───!!?」
と…斗織が下ネタを…!!
なんで!? いつからそんなキャラになっちゃったんだよ!?
てか、誰?! 斗織に下ネタ仕込んだのはあぁっ!!
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