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第316話 愛を感じるお説教
抱き締めてくる斗織の背中にそろそろと腕を回す。
俺がまた泣いちゃったから慰めてくれてるのかな…?
甘えて抱き着いちゃったら図々しいって思われるかな……?
………やっぱり離れた方がいいよね。
結論を出して、斗織の胸を押し離れようとすれば、どうしてだか、より強く抱き締められた。
「……斗織?」
「心配させんな」
「え……?」
えっ? えぇ…??
心配したの?
え? なんでだ?
さっき斗織、俺の心配はいらないって言ったじゃん。
征二くんの心配しかしてなかったじゃん!
「あの……しんぱい…した……?」
「たりめーだろ、落ちて怪我したらどうすんだ、階段で走んな。それから遼、お前、俺見つける度に周り確認しねェで駆け出すのヤメろ、マジで危ねェから。俺から行ってやるから、その場でおとなしく待ってろ。何かあってからじゃ遅ェんだぞ。お前はすぐ俺しか見えなくなんだから。いつも言ってんだろ。ステイだ、遼」
矢継ぎ早に怒られた。
だけど、その内容は、俺が反省してた部分とは、ちょっと違っていて……
「うぅ……」
愛されてることが実感できるお説教だった。
「とおるっ…!」
今度こそ、ぎゅっと強く斗織に抱き着いた。
「……ったく。なに勘違いして泣いてんのか知んねェけどなぁ」
うそうそ、知んねェとか言っといて、ホントは分かってるくせに!
「そりゃガキの心配もすっけどな、何度も言って聞かせてんだろが。俺の最優先事項はなんだ?」
「───はいっ! 俺です!」
「分かってんなら、くだんねェ事うだうだ考えて泣いてんじゃねェ」
「うぅ~…とおるぅ……」
「あっ、コラ、遼」
涙で濡れた顔を肩に擦り付けると、着物が汚れるからって身体を押し離された。
ヒドイ! 俺が最優先じゃなかったんですか!?
代わりに差し出してくれた手ぬぐいは、とても男子高生の持ち物とは思えない程、大人の良い匂いを漂わせていた。
流石和装男子。
俺も今度、ハンカチお香で焚き染めようかなぁ……
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