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第317話 そこには色々居たらしい
「斗織!テメェいつまで待たせるつもりだ!!」
階段下で斗織にくっついてスリスリしてたら、突然部屋の中から苛々した様子の怒鳴り声が聞こえてきた。
斗織の肩がビクッと震える。
なんだか、シビビッてなってるにゃんこみたい。
「すぐ行きますっ!」
条件反射、俺の手を引いて斗織が大股で歩きだした。
「お兄ちゃん、帰ってたんだね」
「……ああ、色々居る」
「色々……?」
「失礼します」
襖が開かれると、その向こうに沢山の顔が見えた。
確かに、色々居る。
「こんばんは」
「こんばんは。久し振りだね」
「よっ、青少年。また2人でイチャイチャしてたのかよ? ヤ~ラシーっ」
「よぉ先生、初授業はどうだった?」
挨拶すると、それぞれ異なる笑顔を浮かべて、3人の大人の男の人が返してくれる。
優しい笑みの一也さん。
からかう様に笑うマナちゃん先生。
口端をニヤリともたげるお兄ちゃん。
それから、芽衣さんに、子供達。
卓上には所狭しと美味しそうな和食が並べられてる。
「芽衣ちゃんと僕で作ったんだぜ! もっと褒めて!」
とは、思わず口から出た「美味しそう」の言葉に反応したマナちゃん先生の台詞。
学校からダッシュでここに来て、俺が征二くんと2階にいた間もずっと台所でお料理していたらしい。
「タダ飯食おうってんだから、手伝いぐらいすんのは当たり前だろーが」
「イダッ!!」
お兄ちゃんがマナちゃん先生にゴチン! とやると、たんこぶが出来てないかと慌てて一也さんがその頭を抱き寄せる。
マナちゃん先生は目尻に涙を浮かべつつも、お兄ちゃんに向けてこっそりあっかんべー。
目敏いお兄ちゃんがそれに気付いて拳を掲げると、一也さんが「コラ、大和」と窘 めた。
「寿也君を虐めない」
「虐めてねェだろ。大体ソイツが…、っ! あっ、テメ!!」
「一也さんっ」
「大和」
一也さんに叱られてるお兄ちゃんを隠れてキシシと笑ってたマナちゃん先生。
お兄ちゃんに気付かれるやいなや、その顔を一也さんの胸に埋めた。
マナちゃん先生、絶対お兄ちゃんで遊んでる………
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