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第318話 健全な男子高生

賑やかな食事が終わって、解散の流れ。 一也さんは明日お休みだから、マナちゃん先生のお家にお泊りなんだって。 門を出るまでって言いながら腕を組んで、二人は幸せそうに帰っていった。 お兄ちゃんは食事休憩で一旦出てきていたらしくて、病院からの連絡に舌打ちすると慌ただしく戻っていった。 俺のことを家まで送るって言ってくれた斗織は、ただ今着物から洋服へお着替え中。 俺は斗織の部屋で、斗織を見ながら着替えが終わるのをじっと待ってる。 初めて上がった恋人の部屋。すぐ目の前で、一枚一枚着物を剥いでいく愛しい人。 仮令(たとえ)相手が同じ男だろうと、恋人の艶姿。色っぽい。きゅんきゅんしない訳がない。 「……お前な、人の着替え、んなキラキラした目で見てんじゃねェよ。寧ろギラギラか…」 背筋、腹筋、胸筋、……靭やかな筋肉が綺麗だな。 脚長~い! 脚の付け根と腹筋の境のとこ、男らしくて格好良い。 あっ、腕の筋肉、盛りってなった! パンイチご馳走様です! その逞しい膨らみが堪らない…… そんな俺の思考がまさか聞こえていたわけじゃあるまいに……! コートを羽織った斗織に呆れ顔を向けられた。 「えっ…? そんなことっ、…別に見てないですよ! ぜんぜんっ」 「遼、嘘吐くのがヘタクソ過ぎる」 見てないって言えば勘違いだと思ってくれる筈! と言う俺の考えは、見事バッサリと切り捨てられた。浅はかだった。 見てました! ガッツリ見てました! 超エロい目で見てましたよ!! でもさぁ、そんなの俺の前で斗織が着替えるからいけないんだと思う。 逆に俺が着替えてたらさ、斗織だってぜーったいに見ちゃうと思うよ? 乳首とかお尻とか見て、ヤベェエロい吸い付きてェとか悶々しちゃうんだろー? 斗織だったらそのまま欲望に忠実に俺のこと襲っちゃうかもしんないし。 それ考えたら、俺のが健全。 健全な男子高生レベルです! 「ま、いいや。行くか」 文句言ったところで結局、俺に見られて悪い気はしてないであろう斗織。 ちょっとだけ口元を弛ませて俺に手を差し出して来る。 「お家の中で、良いんですか?」 お母さんやお父さんに見られたらエライことなんじゃ、と躊躇すれば、あんま会わねェから、と焦れたように手を繋がれた。 うちがワンルームな所為もあるんだろうけど、家の中で家族に会わないなんて、変な感じだ。 斗織、淋しくないのかな……? それに、絶対に会わないって保証があるわけじゃないし、やっぱり友達の距離でいた方がいいんじゃないかな……? 眉尻の下がった顔で見上げると、 「ん? どうした?」 その大きな掌で頭をポンと撫で、ついでのように唇を奪われた。 ナチュラルなイケメン行為、心がぎゅっと鷲掴みにされる。 俺はハラハラしていることなんてすっかり忘れて、ハートを舞い踊らせながら斗織の腕にぎゅーっと抱き着いたのだった。

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