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第324話 怪しい雲行き
なんとなく……なんとなくだけど、空気が重くなってる気がする。
リューガくんが訊きたいことを言い渋ってること。
ひろたんが不安がってること。
俺が、過去の気持ちを思い出してしまったこと。
全てが良くない方向に作用したみたいだ。
「りゅーがくんは…」
ひろたんが、意を決した顔をして口を開いた。
「嵯峨野くんが……もしも、女の人じゃなくて、男の人の方がすき……って、言ったら、……どう……思う……?」
「へっ? それは……」
リューガくんは少しだけ、ほんの少しだけ、考える素振りを見せてから、何でも無い顔をして答えた。
「別に気にしねーかな。リョーちんとひろたんだって、男の方が好きだって聞いても友達なの変わんねーし」
寧ろ、俺は斗織発進の友達だしね。
そう。リューガくんは、基本的に許容範囲が広くて、細かい事に拘らない。おおらかな人柄だ。
だけどそれは、自分が関係ない場所にいる安心感の上に成り立ってるものじゃないって言い切れる?
自分に気持ちが向けられてても変わらないって、そう言える?
「もし……、きぅちょうが、りぅがくんの事を、好きだって言ったら……?」
「いや……それは………」
この反応。リューガくんもその可能性を考えて、態度がおかしくなっちゃってたんだと思う。
「……いつもは、ベッドに転がったら1分で爆睡なのにさ、……こないだは全然……、朝まで寝らんなかったんだよな……」
「………イヤだったから……? 気持ち悪いって思った?」
「いや、ひろたん、ヤじゃねーし、気持ち悪くもねーよ。けど、……なんつーかな………」
言葉が詰まるのは言い辛い事を言おうとしてるからじゃなくて、自分で自分の気持ちが分かってないからだ……と思う。
「俺、リクトのこと好きだけど、リョーちんやひろたんみたいな意味で好きなんかは……分かんねーし、……そもそもリクトがどっちを好きかってのも分かってねーしな!───だよなぁ………。ワリ、先走った!」
目の前でゴメンって掌立てて、急に話を打ち切ろうとするリューガくん。
何も解決してない。
自分一人じゃ抱え切れなくなったから俺達に相談したんだろうに、なんで最後まで頼ってくれないんだろう。
「───りぅがくん、俺怒るよ」
気付いたらほっぺが膨らんでた俺に、リューガくんは俯けてた顔を上げ、面食らったように目をぱちくりさせた。
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