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第325話 喩え話

「俺、りぅがくんのこと好きだよ。大切な友達だと思ってる」 「お、おぅ……」 「だから、俺達に相談してくれたの嬉しかったのに、なんで途中で打ち切ろうとすんの? 俺たち、そんなに頼りない?」 じっと目を見つめながら──ううん、怒ってるから睨みつけちゃってるかもしれない──訊けば、リューガくんは目を見開いて慌てたように首を横に振った。 「ちげーし! んなワケねーじゃんっ!」 「じゃあ頼ればいいじゃんっ」 「俺自身も良く分かってないことに巻き込むの悪ぃだろ」 「良く分かんないから相談してんだろ。途中でやめること無いじゃん!」 「それはっ!……まあ、……そうなんだけどさ………」 そこで言葉を詰まらせると、リューガくんは退席しようと立ち上がってた身を下ろし、観念したようにまたベンチに腰を落ち着けた。 一緒に立ち上がってた俺と、リューガくんを挟んでひろたんも倣ってベンチに座る。 「……あの、ね? ……りゅーがくん、自分の気持ちが分からなくて、困ってるんでしょ?」 ひろたんがリューガくんの顔を覗き込みながら訊いた。 「だったら、もし嵯峨野くんが他の人を好きだったらって考えたら……どうかな?」 「───それだっ!!」 ひろたん、良いこと言う! 「りぅがくん、例えばだよ?」 「お……おぅ………」 リューガくんが俺の勢いにちょっと引いてるけど、気にしない! 「例えば、えぇと……ね、田中君でいいや」 例として上げたのは、クリスマスパーティで一緒に遊んだ3人の内、一番背の低い田中くん。 シャツの上に着たパーカーが萌え袖の、あの中だったら一番受けっぽい人だ。(←級長の悪影響) 「きぅちょうがね、田中くんのこと好きで、田中くんばっかり構うの。今、りぅがくんにやってること───家に呼んでお泊りしたり、優しく頭撫でたり、口の横についた食べかす取ってあげたり、喉乾いてるっぽかったらすかさずお茶くれたり……」 「は……? リクトのヤツ、普段俺にそんなコトしてっか?」 「してるでしょ」 されてるのに気付いてないとか……。 まさか、やってる方も無自覚じゃないよね? 「兎に角、そういう事をりぅがくんにはしなくなって、見てる前で田中くんにばっかりやるようになったら、どう?」 「いや……どうもなにも…さ……、でも、したら俺、皆ん中で1人になっちゃうじゃん。今はリクトがいっから……って、リクトもあぶれもん同士構ってるだけじゃねーの?」 そんなこと言いながら、リューガくんの唇は、それじゃ納得いかないと言わんばかりに尖ってる。 「じゃあ、リューガくんには山田くんか佐藤くんを宛てがいます。それで1人あぶれないなら、つまんなくないでしょ? なんなら、2人掛かりでりぅがくんの事構えば、きぅちょうのことなんて気にする暇も無くなるよ」 「や……、それは、……だって、トールだって、リョーちんのことばっか構ってたって、友達だし……結局……」 「うん。友達なんだったらさ、自分のこと特別に構ってくれなくても平気でしょ? ね、きぅちょうに甘やかされなくても全然気になんないよね? 友達でいられるよね?  少なくとも俺達はそうだよ。ね、ひろたん?」 「えっ!? ──あっ、うん! 友達だよ!」 不意に話を振られたひろたんは面食らったみたいでちょっとビクッとしたけど、すぐに同意して頷いてくれた。 「いや、だって……今までは………」 リューガくんはまだ認めたくないのか、口の中でなんかモゴモゴ言っちゃってる。

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