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第326話 キランッ

「んー…、じゃあさ、俺、前にきぅちょうから訊かれたことあるんだけど。羽崎君に抱かれたいですか?って」 「はっ……? えっ!? はっ!?」 ……は、ちょっと、リューガくんには過激すぎたか……。 じゃあ………、これならどうかな? 「話を変えます。一旦今のは忘れてください」 「えっ? は? えっ…?」 リューガくんてば、さっきから「え」と「は」しか言ってない。 俺相手に、ちょっと緊張しすぎじゃない? 「きぅちょうにね、斗織にキスされたこと、嫌じゃなかったかって訊かれた。俺、全然嫌じゃなかったんだよね。気持よくてふわふわして、嬉しかった」 「あ…、うん……はい………」 リューガくん、真っ赤。 これでも照れちゃうのか。シャイボーイめ。 「俺と斗織、初めて言葉交わしてから1分ぐらいでキスしちゃったから、参考にならないかもなんだけど……」 「えっ!? ……そっ、そうなのかっ!?」 「うん。でも俺達の事は今はいいの! だから、りぅがくんはまず……きぅちょうにぎゅってされるの、どう? やだ?」 「っ!……ヤじゃねぇ……。別に…普通……」 「山田君や佐藤君だったら?」 「それはキメェ!」 「ふむふむ。じゃあ、ぎゅ、して、ほっぺスリスリは?」 「は………?」 あ、リューガくん、固まった。 俺、あの時の級長よろしく精神分析官みたいでかっこいい! なんてちらっと思ってたんだけど……。 級長みたいには上手くいかないなぁ。 「ベッドに腰掛けてるとこに正面から跨って、すきって、ぎゅってしたら抱き締めてくれて、首筋にちゅってされるのとか、結構しあわせですよ?」 「りょーくん、そんなことしてるんだ……。いいなぁ……」 「ひろたんがすれば中山も喜ぶと思うよ」 「そ、そうかな……?」 「それ………俺がしても……そうなるか…?」 リューガくんっ! 食いついたっ!? 「なるよ!」 「うん! なるよ!」 「きぅちょうなら萌え溶けちゃうかもしれない!」 「萌え…溶け……??」 「兎に角やってみよう! 1回やってみよう!」 「それで自分が嫌じゃなかったら、好きってことだよ、りゅーがくんっ!」 「う……おぅ、……そうか、そうだな……」 それが出来るんだったら、そもそもがして『好き』ってことなんじゃないのかな? そう思ってひろたんを見ると、唇の前でしーっと人差し指を立てられた。 可愛い子の『ナイショ』ポーズ、破壊力半端ない!! 「……でさ、それ確認したら、どうすりゃいいんだ……?」 いつもは『ガンガンいこうぜ!』ってイメージのリューガくん。 今日はずっとこんな感じで、可愛いけどちょっと心配だ。 俺達がついてなきゃ、気付いた気持ちにもフタしちゃいそう。気付いてるのかも微妙だし。 だけど現在、季節は冬。 折しも2月、二週間もせずに訪れる愛のイベント。 「───バレンタイン!」 「チョコ作ろう!」 「きぅちょう、甘い物平気だよね!?」 「チョコあげて、すきって言おう!」 「えっ!? いやいやいや、俺、チョコとか作れねーしっ」 「そこは遼ちゃんでしょ!」 「りょーくん、僕もよろしくお願いします!」 「えっ、いやっ! えっ、リョーちん!? ひろたん?!」 「斗織が部活の日、3人で材料買いに行って、13日に作りましょ~。遼司先生におまかせっ☆」 「おまかせ!キランッ☆」 「いやっ、キランじゃなくて!」 「では、何を作りたいか考えておいて下さい。解散っ!」 「はいっ。ありがとうございました!」 「リョーちん! ひろたーんっ!!」

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