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第328話 恋人馬鹿
切り分けた鶏もも肉に下味を付ける。うちの唐揚げは醤油風味だ。ニンニクに生姜、焼酎で臭みを消して、ちょっとのマヨネーズでジューシーさをプラスする。
肉を揉み込んで、手を洗う。下味を付けた肉を一旦冷蔵庫にしまっていると、スマホが電話の着信を告げた。
料理中だから終わってから掛け直そうと思ったのに、斗織が「ん」と渡してくる。
……気になるわけね。
はいはい、出ますよ。
「はい」
『りょーじ…か…?』
こっちもこっちで、なんでそんなに声が神妙なんだよ……。
「遼司だよ」
『スピーカーになってないか!?』
「え? スピーカー? ……しようか?」
『ばっ…! ヤメロッ! おまえっ、俺が可愛くないのかっ!?』
「は?……可愛くないけど…?」
『りょーじ~っ』
そんな泣かれても……
実際可愛くないんだからしょーがない。
「で、何? いつ会える?」
『いや………それ、マジで会うやつ……?』
「斗織が会いたいんだって」
『なんでだよ!?』
「なんでって……」
正直に牽制の為…とは言いづらいな。
まさかただの幼馴染み相手に……。斗織の恋人バカがバレちゃう。
「えっと……俺の幼馴染み、見ときたいんだって」
『自撮り送るから!』
「こっちもキス写真送ってやるか?」
スピーカーになってなくても聞こえてたみたいで、ボソッと囁く斗織。
若干でも笑ってれば、俺も笑い飛ばせたものを。
「それかハメ撮…」
「とーるっ! ちょっと大人しくしてて!」
なんだか馬鹿なことばっかり言ってる斗織をキッチンに置き去りにして、ベッドの方に移動した。
料理中にこんな長話、落ち着かない。
しーくんが〇〇日ならオッケーって言えば1分で済む話なのにさ。
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