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第332話 作戦会議

「ふぉんだんしょこら? って美味いのか?」 今日は斗織の部活の日。 後でうちに来てね、って言ってバイバイして、3人で街に繰り出した。 ちなみに、中山も部活で、級長は委員会。こんなに上手く重なってくれるなんて運が良い。 やっぱり俺達の日頃の行いが良い所為? なんて。 「美味しいよ。中のチョコがとろってして」 「ほうほう」 取り敢えず作るものを決めようと立ち寄ったカフェで3人で眺めてるのは、図書室から借りてきたチョコレートのレシピ本。 「んー…、フォンダンショコラでもいいけど……」 「リョーちん作ったことなかった?」 「ううん、それはいいんだけど……。りぅがくんもひろたんも、一緒に食べられる?」 質問の意味が分からなかったみたいで、2人は同時に首をこてんと傾げた。かわい。 「このフォンダンショコラのレシピ、中を蕩けさせる為に焼き立てを頂くか、食べる前にレンジであっためる、ってなってるでしょ。 あげる時に温めて食べてって一言添えても良いんだけど、相手に手間かけさせちゃうのもどうかなぁって。 それに、緊張してたら言い忘れちゃうかもだし、忘れないように手紙書いたら、それを愛のメッセージだと勘違いして読んだ瞬間ガッカリさせちゃう……かも」 俺は家であっためてどうぞって出来るから平気だし、斗織もあんまり食べる機会無いだろうから喜んでくれるだろうけど……。 ひろたんは付き合ってるって言っても渡す時すごく緊張しそうだし、リューガくんに至っては渡した瞬間逃げちゃいそうだ。 「なっ…なるほど……」 「……確かにりょーくんの言う通りかも……」 「だから、渡されたそのままで手間なく食べられる物が良いかなぁと思う」 2人は納得したようで、そうする! と声を合わせ次のページを捲った。 ガトーショコラ、生チョコ、トリュフ、フィナンシェ、シフォンケーキ、オペラ。 贈り物を選んでる筈なのに、2人はどれも食べたいと言っている様に、目をハート形にしちゃってる。 暫くそうして3人であれも良い、これも美味しそう、と本を捲っていたけれど…… 「リョーちん、やっぱり俺、フォンダンショコラ食いたい…!」 リューガくんが真剣な眼差しで、俺の瞳を捉えた。 「りょーくん、僕も……頑張ってみる!」 ひろたんも、胸の前でギュッと拳を握る。 やる気になった2人。リューガくんの言葉は…まあ、置いといて。 ……うん、多分「フォンダンショコラをあげたい」ってのを言い間違えちゃっただけだと思うから。多分。 兎に角アレだ。2人のがんばる宣言聞いたらさ、応援しないわけにいかないでしょ。友達として! 「うん。俺も、斗織にフォンダンショコラあげたい」 3人で頑張って作ろ! と笑って見せれば、2人も強張ってた顔をふわっと綻ばせた。 「じゃあ、飲み終わったら材料と、ラッピング見に行こう」 「うんっ!」 話は纏まった! と思ったのに、リューガくんが不思議そうに顔を傾げる。 「あ? ラッピング?」 「そうだよ、りゅーがくん。ちゃんと綺麗に包んで渡さないと」 「一緒に食うのにか? なんか適当にプラ容器とかじゃダメなんか?」 「「プラ容器ぃーっ!!?」」 なにその「適当に」とかって!? リューガくん、女子力ゼロ!! ……いや、俺たち皆男なんだから、普段は女子力なんて欠片も要らないんだけど、でも……さ。 バレンタインの贈り物。 あげる側だって、貰う側だって、トキメキたいじゃん。 特にリューガくんはまだ付き合ってないんだから、よりドキドキさせないと! 級長、何気にモテるし、他の人から貰ったものと比べても、特☆別☆に! キラキラさせたいじゃん。 「Loveが感じられない。却下です」 「箱に入れて、包装紙に、袋でしょ。それからメッセージカード!」 「流石ひろたん! 女姉弟(きょうだい)の末っ子!」 「……ん? それだと僕も女の子みたいなんだけど……?」 女の子“みたい”に否定できなくて誤魔化すように笑ってみせると、ひろたんは、もーっ! とほっぺを膨らませて、残ってたアイスティーをちゅーっと飲み干した。 「はいっ、飲み終わった。りょーくん、行くよ!」 「わわっ、待って!」 「ほらほら、置いてくぞ、リョーちん!」 リューガくんまで一緒になって、ニヤリって笑いながら立ち上がる。 3分の1くらい残ってたアイスティーを一気に吸い込んで、もう出口付近まで行っちゃってる2人を慌てて追い掛けた。

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