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第333話 待ち合わせ
さてさて、2月某日。
バレンタインにほど近い平日の放課後。待ち合わせの定番、新宿ア◯タ前。
タ◯リさんが日参しなくなって久しい街に、俺は斗織と2人、学校帰りの制服のままで訪れていた。
しーくんとの待ち合わせ。
勿論、バレンタインのチョコは持ってきてない。
ちょっと可哀想な気もするけど、俺にとっては斗織に悲しい思いさせちゃうかもって方が大問題だ。
今日はぜってェ時計し忘れてくんなよ、と普段から忘れたことなんて無い俺にわざわざ念をした心配症の斗織は、今だって俺の手を握りっぱなし。
嬉しいけど、時折二度見してく人達は、きっと「男同士かよ!」って驚いてるんだと思う……と、ちょっとだけ気になってしまう。
俯きがちに歩いてて、繋がれた手と2人のスラックスを見た人が、俺と斗織の顔をチラ見して、「えっ!?」て顔して俺の顔二度見とかね、失礼だから!
どう言う意味で二度見してんだよ、もぉ!
斗織は堂々としたもので、俺が繋がった手をこっそり背後に隠そうとしても、すぐに見せ付けるように前に出しちゃう。
「お前すぐ変な男にちょっかい掛けられんだから、おとなしく繋がれとけ」
そうは言うけど、俺今日制服だし、完全に男に見えてるから大丈夫だと思う。
……まあ、男に見えてても声掛けてくるそーすけさん(斗織の従兄)みたいな人も居るかもだけど。
「やっぱアル◯前だと混むな。別のトコのが良かったんじゃねェか?」
繋いだ手を離して、俺の腰を抱き寄せながらため息混じりにボヤく。
隣の人とぶつかりそうな距離に気を遣ってくれたんだろうけど、こんな所でこんなに引っ付いて……
ちょっと恥ずかしい。バカップルみたい。
赤くなりそうなのを誤魔化すように、プルプルって振ってから顔を上げる。
「待ち合わせの定番って、○ルタ前じゃないの?」
「いや、区民はここじゃねェな。マメとかだと家から一緒だし、他の奴とも、あっちの交番前か、現地集合とか、ホームの端っことかな。もっと空いてるトコ」
道を挟んで駅ビル側を指差すからそっちに視線をやると、
「りょーじ~!」
こんな人混みでも目立つ金髪が、道向こうで俺の名前を叫びながら手をブンブンと振っているのが見えた。
結構な距離と車通りがあるのに、それでも聞こえるような大きな声で人の名前叫ぶなんて……
恥ずかしい………
「あの、斗織、……アレ」
軽く手を振り返してから見上げた先には、眉間に皺の寄った厳しい表情のオトコマエ。
……こらこら。また恐い顔しちゃって。
そんなに威嚇しなくたって、相手はただの幼馴染みなんだから平気だってば。
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