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第343話 ブレないカレシ
斗織は確かに、誰からのチョコレートも受け取らずにいてくれた。義理チョコって渡されそうになった物まで断ってくれて。
流石、俺のカレシはブレないで俺一筋! なんてニヒニヒしちゃったりね。
のほほんと楽しく過ごしてたんだ。
この人、他の子からチョコは受け取らないのに、俺からのチョコは楽しみにしてるんだよ! なんて。
カレシがモテるから心配、とか、カノジョいるって知っててチョコ渡す女ムカつく、ってクラスの女子が不安がってたから俺もちょっとソワソワしてたけど、斗織は今日も俺しか見てない。
「大切なヤツが居っから、そういうの受け取れねェや。泣かしたくねェから」
泣きそうな顔して去ってく子の顔見たら、ちょっと申し訳ない気持ちにもなっちゃったけど……
俺の気分の落ち込みに敏感な斗織は俺を物陰に引き入れると抱き締めて、髪にキスを落としてくれた。
「なんで落ちてんだよ? いいからお前は俺の隣で笑ってろ」
「………うんっ」
だがしかし、それは昼休みも終わり頃。
皆でお昼を食べに教室を出て、戻ってきた時───事件は既に起きた後だった!
斗織の机の上に5つ、ついでに俺の机の上にも2つ。
バレンタインの贈り物だと思われるラッピングされたボックスが置き去りにされていたのだ───!!
そして、放課後。
早くうちに帰って、斗織といちゃいちゃしたいんだけど……
7つのプレゼント包み……これをどうしたものか………
「ねぇ、これさー……、俺的には、俺の机に置いてあったのも全部、斗織宛てだと思うんだよね。多分、俺使って渡させようとしたんだよ」
「な訳あるか」
「だって俺女の子にモテない……って、斗織だって言ってたじゃん」
ぶーって唇を尖らせて、俺の机に纏めて置かれたプレゼントを全部斗織に押し付けると、呆れたように溜息を降らされた。
「あれは、……お前が女より男にモテるって話だろーが。男相手にその気も無い俺がオトされたぐれェだからな」
「斗織は特殊だろぉ? そん時は付き合うの誰でも良かったんだから。
大体、俺が外で男から声掛けられるようになったの、斗織と付き合ってからだからね」
そうだよ。なんか気付いたら瞳がキラキラしてたり、前より睫毛長くなってたり、体もなんとなく丸みを帯びてたり。自分でもその変化に気づくぐらいに。
男の体ってさぁ、もっと角張ったものだろ?
ぜーったい、斗織に抱かれてるからこんな体になっちゃってんだ。それまでは女の子に間違えられるなんてこと無かったもん。
もしかして俺の体から、乙女染みたピンクのオーラとか出ちゃってんのかな…?
「うぅーん……」
近くに鏡も無いから、斗織の瞳に映った自分をじーっと見つめてみる。
「…………わからん」
「何が分かんねェんだ?」
黒い瞳が近づいてきたと思ったら、コツンとおでこがぶつかった。
───甘い声に、甘い眼差し。
教室だってのも忘れて、うっとりしちゃいそう……。
喉をこしょこしょって擽られて、目をギュッと瞑る。
「外でそういう顔すんな」
「キスしたくなっちゃう?」
「あと、別に誰でも良かった訳じゃねェからな」
「んー?」
「あの時声掛けてきたのがお前じゃなかったら、付き合ってねェよって話」
「……………っ!? ───何ソレほんとっ!?」
「…………んな嘘言わねェだろ、…俺は……」
俯いて自分の頭をクシャってした斗織の顔を覗き込めば、見事に顔を逸らされた。
───!!
照れてますよ!
照れまくってますよ、これ!!
「それは、俺だから付き合おうかと思ったってやつですか!?」
「………芸能レポーターか、お前は」
「遼司さんの何処を好きになったんですか!?」
「………降ってきたとこ」
なんだそりゃ?………なんだそりゃ!?
「えー…? じゃあ、俺じゃない他の人に付き合おうって言われてたら?」
「……マメから聞いたことねェか?……面倒くせェから、別れた直後は一週間は間空けんだよ。前のと今のとモメられてもウゼェし」
「………………」
う……と、……それって、俺だったから別れた直後から付き合ったって話なんだろうけどさ………
「斗織さん、最低オトコだったんですか…?」
「ウッセェ」
「そう言えば……別れ話の時、元カノ滅茶苦茶怒ってた……」
別れの場面を思い出してそう言えば、斗織は不機嫌そうにチッと舌を鳴らした。
「テメェがいなきゃ、未だに俺は最低オトコなんだろーよ」
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