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第346話 願掛け
「級長はいつの間にチョコ貰ってたの?」
教室へ戻りながら気になってたことを訊ねる。
俺達と一緒の時はお断りしてたし、昼休み明けにも机の上は綺麗だった。
「朝来たらもう机に入っていました」
「へぇ……そっか」
級長のこと好きになるの、おとなしい子が多そうだもんな。直接渡せないし、他の人達にも見られたくないから、朝早く来てこっそり机の中に忍ばせたんだろう。
何はともあれ、リューガくんの目の前で受け取ったんじゃなくて良かったよ。
「去年は有り難く頂戴したんですが、今年は願掛けと思って……、同好会の同志たちからの友チョコも断ったんです」
「願掛け?」
「想いを寄せる相手から、受け取ることが出来ればと」
「!…………そっか…」
前を向き歩を進める級長の横顔を見上げる。
級長の本命……
「俺の思う相手だったらいいな……」
ポツリと呟けば、地獄耳の持ち主…きっと聞こえてしまったんだろう。
こっちに顔を向けて、にっこり微笑んだ。
「───あの、そう言えばりぅがくんは?」
「竜臥なら一緒に帰る予定ですよ。日直の仕事を手伝ってもらった後、付き合わせるわけにもいかないので教室で待っていてもらっていますが」
ふむふむ。ちゃんと約束は取り付けられたみたいだ。リューガくん、グッジョブ!
ひろたんと中山は付き合ってるから大丈夫だろうけど、級長は忙しい人だからちょっと心配してたんだよね。
「女の子からチョコ貰ったの、りぅがくんには内緒にするんだよ」
「ああ、マメの奴は今年も渡されなかっただろうからな」
違う、斗織。そういうコトじゃない。
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