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第348話 若様
フォンダンショコラにフォークを入れると、とろっとろのチョコレートが流れ出てくる。
アイスとホイップクリームと和えて食べれば、温かさと冷たさとあま~い感覚が口の中に広がって、不思議美味しい。
ふと気になって盗み見ると、普段はキリッとしてるツリ気味の目が至福に蕩けてて、口の端に溶けたチョコ付けて……男前が台無し。
だけど、すっごく可愛い!
写真撮りたい! 可愛すぎる好き!!
……でも、他の人の前でもあんな無防備な顔見せられたらやだなぁ。
そんな事を考えながらこっそり見つめてると、目を上げた斗織とバチッと視線が合わさった。
「遼、見過ぎだ」
「…あはは……」
バレてた…!
「趣味のイケメン観察です!」
ビシッと敬礼してみせると、
「観察対象は俺だけにしとけ」
俺と視線を合わせながら口端のチョコをペロッと舐めとった。
「いいなぁ…。俺の口についたチョコもペロッてして欲しい……」
「お前、嫉妬相手おかしくないか?」
失笑された…!!
だって、恋人の俺の目の前で斗織の舌に舐められちゃうなんて、斗織の唇ズルくないですか!?
俺にヤキモチ焼かせようとして、態と煽ってきたんだと思うじゃん!
「遼」
一人ショックを受けてると、笑い混じりに名前を呼ばれた。
「なんですかー?」
ちょっと拗ねてるから、返事は少し尖り気味。
「いや…、美味い。ありがとな」
「っっ!!~~~うんっ!」
照れっ照れの笑顔! いただきました!!
「あと、それ態 とか?」
「え?」
「クリーム付いてる」
ついと顔を近づけ、唇をひと舐めするとはむ、ちゅっと啄み離れていくイケメン彼氏様。
ひぃやぁ~~っ!!!
BLマンガの王子様ぁっ!!
狙いすぎだから!ベタすぎだから! やりすぎ注意報発令!
なのに狙い通りきゅんきゅんドキンドキンさせるとかっ!!
なんだそれ!そんなん何処で学習してくんの!?
一人わたわた暴れてると、斗織はフッと小さく笑って食事を再開した。
今日の着流しはブラウンだから、チョコレートの国の若様がチョコレートを召し上がってるみたい、なんて。
でも、そう見えちゃうくらい、斗織って品があるんだよねぇ。
そんな若様のお皿はそろそろ空になっちゃいそうだ。
若様を待たせちゃいけない!
俺は慌ててショコラをフォークでザックリ切ろうとして、いや……少しでも斗織に見合う上品さを身につけるべく、スッとフォークを滑らせたのだった。
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