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第349話 プンスコ

洗い物を片付けて、斗織の待つベッド近くに移動する。 「開けるぞ」 朝 渡したプレゼントを膝に乗せてリボンをツンツン引っ張ってた斗織は、俺が座るのも待ち切れないのかそう断るなりスルッとリボンを解いた。 「……昨日の写真か」 一番後で開けて欲しかった───寧ろ帰ってから一人で見て欲しかったメッセージカードの封筒を真っ先に開けられた……!! 「なんでうさぎだよ」 アプリで撮られたウサ耳付きの俺は、目が大きくて、ほっぺと唇はピンク色で、エプロン姿も相まって大分乙女度が高まってる。 「知らないよ。マナちゃん先生チョイスだもん」 そんな噴き出すほど似合わないかな? 俺的には、ちょっとは「俺の遼かわいーっ」てなるかと思ってたんだけど…。 「……可愛くないですか?」 「いや、可愛くねェことは……つかこれ、目ェデカすぎんだろ」 「むー……」 なんでそこで笑うかなぁ!? 「ま、アレだな」 「アレって?」 事と次第によっちゃ、遼ちゃんプンスコですよ! 「こんなカメラアプリ使わねェでも、お前はそのまんまが一番可愛いだろ」 「とお───っ」 「んで、こっちは手紙か?」 「る待ったーっ!」 開かれるのを止めようと伸ばした手が空を切る。 勢い良く立ち上がった斗織は、まさかそこまでと驚くほど高くにメッセージカードを掲げていた。 マックス!その高さマックス!! ピョンピョン跳ねてみるけど、下の人に迷惑にならない程度のジャンプじゃ到底届かない。 「斗織のことが大好きです。 もう3ヶ月なんて言わないよ。 ずっと、ずっとずーっと 俺の側にいてください。            遼」 ラグの上に倒れ込む。 読まれた…… 声を出して……… 辱めに合わされた───! ………ずーっと、ってトコ、読み方ちょっと可愛かったけど。 「セクハラ110番」 読み終わってしゃがんだ斗織が、仰向けに倒れた俺の顔を覗き込んでくる。 両腕で目元を隠すと、フッと笑われた。 「遼」 「……なんですか? 顔赤ェぞ、ですか?」 「確かに。耳まで赤ェ」 「も~~っ」 脚をバタバタ暴れてると、脇に手を差し込まれて頭を膝の上に移動させられる。 「自分で言ったことなんだから、忘れんなよ」 「……? なにを?」 「お前こそ、側にいろよってこと。 つかお前、来年春にはマジでこっち戻ってくるんだろーな?」 「っ!────はいっ!!」 顔を隠してた両手をめいっぱい挙げて返事した。 「俺こっちの大学受けるよ! それでね、将来的には税理士の資格取りたいなって思ってて」 「税理士?……ああ、お前の母親社長だもんな」 「母さん? 社長だけどなんで?」 「いや、だから母親の会社のなんか手伝いたいってことじゃねェのか?」 「んーっ!?」 見当違いな斗織の駄推にプンスコ再発動。 母さんの会社はもうとっくに優秀な公認会計士さんや税理士さんに付いててもらってるだろうし、今から縁故(コネ)で仕事狙ってたりなんてしないよ! 「あのねぇ、斗織くん。俺の最優先事項はなんでしょーか?」 起き上がって正面に座り直す。 「聖一郎さんだろ?」 ───ガンッ!! 「なんで父さんだよ!?」 「じゃあ俺か?」 「じゃあ、じゃなくて、まるっと斗織だよ!」 「そうかぁ?」 なんだその納得いってない顔は!? 「斗織くんは、将来何になるんでしたっけ?」 「あ? 俺は家元になっけど」 「斗織は税務関係、自分で処理出来るの?」 「ああ? 税務?」 なんて頼りない家元だ!! 「そこでお役に立つのが、税理士の紫藤先生。面倒な税務は、遼ちゃん先生にお・ま・か・せ、キランッ☆」 「……遼…」 「はい!」 俺がちゃーんと将来の2人のこと考えてるの、感動した!? ますます惚れちゃった!? 「そのキランッての流行ってんのか? 昨日も3人でやってたろ」 「っ───!!?」 今の! 俺が芸人だったら盛大に椅子からズリ落ちてるとこだからね!? なにそのフェイント!? 斗織にはそういうボケいらないんだからなーーっ!!

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