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第350話 欲しい言葉
「つーのは冗談で」
頭を抱き寄せられて、肩におでこをこつんとぶつけた。
「俺達の将来のこと、真剣に考えてくれてたんだな」
「………うん」
「ありがとな」
「っ───うんっ!」
嬉しくて、その胸にぎゅっと抱き着くと、斗織は俺の背中を優しく抱き締め返してくれた。
なんだよもぉっ!
ヘタな冗談で俺のこと振り回してっ!
「ばぁか~っ」
「誰が馬鹿だ」
「いたっ」
頭を小突かれた……!
当たりは相当弱いかもだけど、容赦無いのは付き合いたてから変わらない。
「で、中身はなんだ?」
俺を抱っこしたまま箱を開けようとするから、待ってもらって隣に座り直す。
ピタッてくっついて、プレゼントを確認する斗織をドキドキしながら見上げた。
「ベルト、か」
目を合わせて、プッと笑った。
俺の企みを一瞬で見抜いたらしい。
「パンツの次はベルトって、どれだけ俺の下半身防御してェんだよ?」
「限界までです!」
「信用ねェー」
冗談混じりに笑われる。
「信用はね、ちゃんとしてるよ。でもいいの。これは俺の気持ちの問題なの」
斗織にプレゼントしたベルトは、お洒落で小粋な、みたいに特別な物じゃない。
ロックだぜ! まあ、なんて芸術的! なんて格好いい物でもない。
シンプルイズベスト、なんの変哲も無い黒色のベルトだ。ちょっと奮発して本皮にしたけど。
でも、これなら学校にも着けてけるし、いつでも──着替える時は勿論、トイレの時だって──俺のこと、思い出すし考えちゃうだろ?
病的で……引かれちゃうかもしれないけど、そのぐらい俺、斗織に想われてたいし、想ってたい。
「………着けてくれる?」
斗織の反応に少しだけ不安になって訊ねれば、
「たりめーだろ」
頭をクシャって撫でてくれた。
「………ふふっ」
「……なんだよ?」
「……ううん。流石俺の王子様は、俺の欲しい言葉をなんでもくれるなぁ、と思って」
「……後は何が欲しい?」
「え?」
「遼、俺はお前が好きだ。
だからお前も、もっと俺のことを好きになれ。俺の事しか考えられないようになれよ」
「~~~っっ!!!?」
「───つーセリフを、級長に借りたマンガで読んだ」
「?!───何やってんだあの人!!」
なに斗織にBLマンガ貸してくれちゃってんの級長ーーっ!!
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