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第358話 2ヶ月

【斗織Side】 付き合いたては1回イカせてやっただけで腰砕けて立たなくなってたヤツが、もう……あれから2ヶ月近くか。 いや。“まだ”2ヶ月か。 さっきまで全身チョコまみれで喘いでたクセに、端から色気なんざ無かったかのように振る舞う遼は、 黄色いネコのルームウェアに、まーた可愛いエプロン着けて(本人はユニセックスって言ってっけど、絶対女モンだろ、沙綾さん…)、ご機嫌でビーフシチューをかき混ぜてる。 鼻歌まで飛び出してる始末だ。 明日も学校だから挿れてからは短く済ましたけど、やっぱり挿れられる方は楽じゃねェだろう。 手伝うか?と申し出れば、「バレンタインだから大丈夫!」と何が大丈夫なのか良く分かんねェ理由で断られた。 随分と逞しくなったもんだ。 ま、体力がつくのは良いことだよな。 汚れたバスタオルは今は洗濯機で回してる。流石にアレは、聖一郎さんが帰ってくる前にどうにかしなきゃヤベェ。 汚れても良いようにチョコレートと似た色で揃えた洗える長着は、手洗いして風呂乾燥で干させてもらった。こっちは多分、聖一郎さんに見られても大丈夫だろう。 「遼ー」 いつかと逆…つーよりいつも通りか。 クッションに寝そべりながら遼を呼ぶ。 仲良く待っててね、と抱かされた兎のとおる(遼命名)のぬくもりの所為もあるんだろうか。 自分でも意識せず、やけにリラックスした声が出た。 「なぁに?」 この間延びした甘えたような返事が好きだ。 他の奴にもやるから本人はきっと自分の声に気付いてないんだろう。 なぁに、はぁい、あと何があったか……。だぁめ、やぁだ、とかか。 これに上目遣いやスキンシップが加われば、そりゃもう下半身に響く。グッとくる。 まあこれは気を許してる奴にしかやらないから………、! コイツ、4月に転校した先に仲良い奴出来たら同じことやるんじゃないか!? 俺いないトコで、襲われんぞ!! 「……とぉる~?」 自分から呼んでおいて考え込んじまってたらしい。 火を止めてこっちに歩いてきた遼に、指先で頬を軽く突付かれた。 「どう言ったご用件でしょうかっ、社長?」 社長って……。 そう言やコイツ、昨日1人で秘書ごっこしてたっけか。 ノッてやるでもないが、とおる(ぬいぐるみ)を除けて、ベッドに腰掛け膝を2回軽く叩く。 「秘書の座るトコは、分かってんだろ?」 「……そんな秘書はお話の中だけですよ?」 呆れ顔を見せながらも、遼はおとなしく俺の膝に座った。 「で、なぁに?」 横座りして首に両腕を絡ませてくるから、頬に触れる柔らかな髪が擽ったい。 「明日の用意もしてあるから、泊まってってもいいか?」 「えっ…!?」 「駄目なら帰んぞ」 「だめっ!…あっ、ちがう!今のだめは帰っちゃだめのだめだから!」 なんか1人で暴れてやがる。 当然こっちも断られるなんて思ってねェし。 ま、慌ててんの見んのも楽しくていいけどな。 「今日は父さん、母さん家にお泊りなんだ。俺、夜1人になっちゃうの淋しいって思ってたから……うれしい!」 もう一度首に、今度は勢い良く飛びついてきた遼は、まるで子供みたいに顔をすり寄せてくる。 さっきまであんなに艶っぽかった奴が、……無邪気かよ。 矢鱈色っぽかったりガキみてェだったり、優等生かと思うと欲望に忠実だったり、すぐ照れるくせに大胆だったり、泣き虫かと思えば男らしくなってみたり。 そういう一面だけじゃないから飽きない、ってこともあんだろーけど。 まあ、そんだけじゃねェよな…。 首筋に顔を埋めて匂いを嗅ぐと、擽ったそうに身を捩らせる。 薄く洩れた吐息が色っぽく聞こえんのは、誰が聞いてもそうなのか、それとも俺がそう受け止めちまう病気なのか…。 願わくは、俺以外の奴は気付いてくれるなと、そんな事を思いながら。 その甘い香りを発する首元にやんわりとかぶり付いた。 それから、遼が用意してくれた夕飯食って、風呂入って、イチャイチャ…しようと思ったけど窘められて、安定の勉強させられて。 俺達の夜は、そうして更けていった。

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