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第359話 情けない自分
時は遡り───
【竜臥Side】
リョーちんに見捨てられた………
いや、追いてかれた。つか、俺の方が置いてった?先に学校出たから。
や、でも俺はリクトに引き摺られただけだし……、ん?したら、リョーちんもトールに引き摺られただけか?
いやそんなんどーでもいい!
自分でも分かってる。
今の俺は、現実逃避してるだけだ、ってこと。
いつもの駅までの道を歩いてると、急に引っ張られて脇道に逸れた。
その瞬間、何処に行くんだって疑問そっちのけで、学校からここ迄ずっと手を繋がれっぱなしだったってことに気付いた。
いやっ、分かってる!ちゃんと分かってるって俺は!
アレだろアレ、俺が帰ろうとしなかったから手を掴んで引っ張ってたってだけだって!
「……あー……、リクト…?」
「こっちは裏道だから空いてるんですよ」
手を繋いだまんまになってる、って言おうと思ったのに、道の説明されて狼狽える……てか、そう返されたらなんか「いや違くて」とか言えなくなる。
俺、意外と情けねぇヤツだったんだな…と気付けば、なんだか自分がスゲーカッコ悪い人間に思えた。
こんなんで告白……なんて出来んのか…!?
リクトに渡すつもりのなんちゃらっつーケーキが入ったスクバの持ち手、繋がれてない方の手でギュッと握りしめる。
「竜臥、どうしました?」
多分、繋いでる方の手にも力が篭っちまったんだろう。
「……いや、なんでもねぇ」
不思議そうに見下ろしてくるメガネの奥の優しい瞳に、首を横に振って答える。
「何か不安なことがあるなら言って下さい」
だけどそう言って、慈しむように頭を撫でられると、
なんか………なんかさ、
俺、やれそうな気がしてきた!!
元来、単純なんだよ俺は。
落ちんのも、立ち直んのも一瞬なの。
「───よっしゃ!!」
グッと拳を握れば、声を殺して笑われた。
その、嫌味に見えない上品な笑顔に、
あぁ、やっぱり好きだな……
なんて。ガラにもなくそんな事を思って。
俺は俺の情けなさに自嘲するのも忘れて、リクトにイヒヒと笑い返した。
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