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第362話 恋愛効果

【竜臥Side】 百合子さんは俺達に「まあソファにでも座って親交を深めてなさい」と言うと、俺の手にした箱に目をやり、 「コーヒー淹れてくるわ」とキッチンへと向かっていった。 「あっ、俺手伝います!」 申し出は、手をひらひらと振ることで断られる。 「それ、先にあの子に渡してあげて」 「あっ…、そうですね…っ」 「よろしく~」 よろしくされたし、リクトもなんかそわそわしてるっぽいし……。 どうぞ、と勧められたソファに座ると、リクトも隣に腰掛けた。 なんかちょっと……うん、ちょっとだけ、な。いつもより距離が近い気がする。 それから、リクトの微笑がいつもより甘い。これは、気がするだけじゃなくて。 「───んで、これな」 白地に真っ赤なハートが散りばめられた包み紙を見て、リクトが顔を綻ばせる。 そんな顔して受け取ってもらえるなんて、お前も幸せもんだな! 手の中の箱まで喜んでるみたいに思えて、なんか…… 告ってよかったなあ!って思った。 つか、リョーちんとひろたんに相談してよかった。 2人に言われなかったら、未だに俺、リクトのこと好きって気付いてなかったもんな。 リクトはスッゲー丁寧に、1ミリだって破かないつもりなのか、そーっとそーっと包装紙を剥がしてく。 ベリッてやっちゃって良いんだぜ、って笑い飛ばそうとして…… うん、俺からのハートだもんな。そりゃ破きたくないよなー! とかって思い直す。 両想いだって分かった途端、俺ちょっと図々しいか? ま、図々しいっつわれても、今結構頭ん中ハレルヤ状態だしな。 暫くはムリだ。 慣れるまで、つか心が落ち着くまで、はしゃぐなっつー方が無茶言うな!って話だ。 綺麗に剥がした包装紙を、これまた綺麗に畳むと、リクトはメッセージカードを開いた。 モコモコのクマがでっかいハート抱いてるイラストのメッセージカードは、これも「分かりやすいのが良い」ってアドバイスしてもらって選んだものだ。 だから中身も、分かりやすく…… 「……好きだ…」 俺の書いたメッセージを口にしたリクトは、柔らかく甘く微笑んだ。 「あー……、口に出して読まれっと照れんな…」 「照れてる竜臥も可愛いですよ」 「知ってっしー」 こう言うのはアレだろ。リョーちんに対するトールがそうであるように、惚れてる相手に関しては何でも三割増しで可愛く見えるってヤツなんだろ? それと、プラスでアレな。 恋人の前ではどうしたって可愛くなっちゃうってマジックだろ? リョーちんもひろたんも、トールと中山の前だとメロメロして普段より可愛くなってっもんな。 あんなトロ顔、他人から見られちまうのは、まあちったぁ恥ずかしいとは思うけど…… そんでも、リクトに可愛いって思われんなら、まあ…そんなんどうでもいっか!ってなる。 うん、まあこれも……アレだな。 恋愛効果ってスゲーな。

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