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第370話 お手伝い?
「ねぇ、母さん。お客さん来るってのに、ほんとに家庭料理でいいの?」
お姉ちゃんに連れられて部屋に入った途端、エプロンを渡されて。
お客様がいらっしゃるから準備手伝って!って、キッチンに案内された。
広くて使いやすそうな綺麗なキッチンには、汚れ一つ無い。
…ってことはさ、母さんもお姉ちゃんも普段、揃って料理してない。ってことなんじゃないの?
まったく、外食ばっかりじゃ塩分も多いし、栄養も偏っちゃうのに。いい大人が2人で何してるんだか。
「ほんとに手伝うだけ?」
「ほんとほんと!好きな食材使っていいから!」
新品同様の調理器具(でも高価そう)。
冷蔵庫の中の使いかけの食材なんて、ミネラルウォーターのペットボトルに牛乳。サラダドレッシングに無糖ヨーグルト。マヨケチャソースの調味料くらい。
卵のパックは6個まるまる開けた形跡も無し、無駄に高級和牛、初めて見るような、ソレ もこ◯ちしか使わないよ!って野菜?に、……なんだこの香辛料??
無駄に色々あるみたいけど。
「何作れば良い訳?」
「家庭料理。普段遼司が作ってるようなのでいいから!」
「俺、手伝いなんだよね?」
「手伝いよ~。じゃ、母さんあっちの準備してきちゃうから、こっちのお手伝いお願い!」
スチャッ!と指を立てて挨拶すると、母さんは別の部屋へと消えていった。
───って!
やっぱり手伝いじゃなくて俺が作るんじゃん!!
「………もー…、何作ろう…?」
「あっ!お姉ちゃん、遼ちゃんの玉子焼き食べたーい!」
「…………」
お姉ちゃんはお姉ちゃんで、一体何をやってるんだか……。
にしても、家庭料理と玉子焼きを出すようなお客さんって…?
地方から出て来た独身の男の人達、とかなのかな?
だったら男の俺が作ったものより、女性の作ったおふくろの味の方がきっと嬉しいよねぇ。
ま、母さん達が作れないんじゃしょうがないけど。
この人達、普段一体どんな食生活送ってるんだろ。
改めて冷蔵庫を開ける。
一通り物色してから、やっぱり和食かな……と、まずは米を研ぐことにした。
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