370 / 418

第370話 お手伝い?

「ねぇ、母さん。お客さん来るってのに、ほんとに家庭料理でいいの?」 お姉ちゃんに連れられて部屋に入った途端、エプロンを渡されて。 お客様がいらっしゃるから準備手伝って!って、キッチンに案内された。 広くて使いやすそうな綺麗なキッチンには、汚れ一つ無い。 …ってことはさ、母さんもお姉ちゃんも普段、揃って料理してない。ってことなんじゃないの? まったく、外食ばっかりじゃ塩分も多いし、栄養も偏っちゃうのに。いい大人が2人で何してるんだか。 「ほんとに手伝うだけ?」 「ほんとほんと!好きな食材使っていいから!」 新品同様の調理器具(でも高価そう)。 冷蔵庫の中の使いかけの食材なんて、ミネラルウォーターのペットボトルに牛乳。サラダドレッシングに無糖ヨーグルト。マヨケチャソースの調味料くらい。 卵のパックは6個まるまる開けた形跡も無し、無駄に高級和牛、初めて見るような、ソレ もこ◯ちしか使わないよ!って野菜?に、……なんだこの香辛料?? 無駄に色々あるみたいけど。 「何作れば良い訳?」 「家庭料理。普段遼司が作ってるようなのでいいから!」 「俺、手伝いなんだよね?」 「手伝いよ~。じゃ、母さんあっちの準備してきちゃうから、こっちのお手伝いお願い!」 スチャッ!と指を立てて挨拶すると、母さんは別の部屋へと消えていった。 ───って! やっぱり手伝いじゃなくて俺が作るんじゃん!! 「………もー…、何作ろう…?」 「あっ!お姉ちゃん、遼ちゃんの玉子焼き食べたーい!」 「…………」 お姉ちゃんはお姉ちゃんで、一体何をやってるんだか……。 にしても、家庭料理と玉子焼きを出すようなお客さんって…? 地方から出て来た独身の男の人達、とかなのかな? だったら男の俺が作ったものより、女性の作ったおふくろの味の方がきっと嬉しいよねぇ。 ま、母さん達が作れないんじゃしょうがないけど。 この人達、普段一体どんな食生活送ってるんだろ。 改めて冷蔵庫を開ける。 一通り物色してから、やっぱり和食かな……と、まずは米を研ぐことにした。

ともだちにシェアしよう!