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第374話 両家集合の謎

結論から言うと、俺の料理は好評だった。 斗織のお母さんがカレイの煮付けをばっくばく(上品にだけど)食べてくれて、面食らいながらも嬉しかった。 嫁として認められた!みたいな。 ……いや、付き合ってることだってまだ言えてないんだけど。 食事を終えて、俺はお姉ちゃんと後片付け。 大人たちはお酒やコーヒーを片手に歓談してる。 斗織も手伝うって言ってくれたんだけど、今日はお客さんだからって断った。だから今はカウンターに寄りかかって待機中。 「お姉ちゃん、一体なにがあってこうなったの?」 大人組の方を気にしながらコソッと訊ねる。 きっと、お姉ちゃんなら何か知ってる筈だから。 「ああ、バレンタインデーに父さん、うちに泊まったじゃない?」 やっぱり知ってた! 「その時、遼ちゃんと斗織君の話になって、父さんが、斗織君と離れるのが可哀想だって。1年間こっちで遼ちゃん預かれないかな?って」 「父さんが……?」 やっぱり父さん、俺のこと、色々考えてくれてたんだ…… 「でも母さんがね、そんなこと言われたって、遼ちゃんは頑固だから絶対父さんについてく筈だ、って言って」 その点については、母さんからの遺伝を疑わざるを得ない……。 「そしたら父さん、それなら別の事で遼司の為になることを何かしてあげたいね。 母さん、そう言えばうちは皆斗織のこと認めてるけど、あちらのお宅はどうなの?沙綾知ってる? 私、今、周囲から懐柔大作戦決行中」 話す人により、口調や声まで変えるお姉ちゃん。 父さんのはあんまり似てないけど、母さんの声真似はそっくりだ! ……にしても。 「なにその作戦名……、初めて聞いたんだけど」 「周りから攻めてってるでしょ? で、既に一也先生と大和先生一家は落ちたから、最後は大ボス、ご両親かなって話になって」 違う、それ作戦じゃない! 段階踏んで、レベルアップを計ってるだけ! ………ん?でも、斗織がそうやって周りから攻め落としていってくれてるって言うなら…… それは、作戦だったのかな……? 「母、大人の都合で振り回してしまった。 父、いつも自分の為に一生懸命になってくれて感謝してる。 姉、今こそ我らが動く時なのではなかろうか!!」 まだモノマネ続いてた……… 「って訳で、ご家族お呼びしてお食事会。 勿論、一也先生はこっち側、味方ポジよ」 「多分、父上も…」 それまでお姉ちゃんの説明を黙って聞いていた斗織が、カウンターから背を離し近付いてくる。 「一也兄さんが話したのか、元々勘が鋭い所為もあんのか分かんねェけど…。父上も知ってるっぽい」 その『父上』って呼び方、なんだか可愛い。 見上げた俺の髪に、斗織の指が触れる。 指にくるくると巻きつけて弄ばれる髪の毛は、頬にかかる癖っ毛じゃなくて、てっぺんのピョンって立っちゃってるやつ。 「そこ巻いちゃダメ。クルクルしちゃうから…」 そんなトコでも、斗織に触れられたら気持ち良くなっちゃう俺は、斗織の発するエッチな電波対応アンテナの受信レベルが相当高いんだと思う。 「遼の印象、結構良いみたいだぞ」 「お父さんの?」 お父さんの方は、出会い頭で可愛いって言ってくれたし、ニコニコして俺に話しかけてきてくれるから、好きになってくれたんじゃないかなって思うけど……。 お母さんの方は上品過ぎて、どうしても笑顔が上っ面だけに見えちゃって……、好かれてるのか分かんない。 「どっちも」 ぽんぽんと軽く叩くように頭を撫でて、斗織の手が離れていった。 「あっ……」 なんとなく淋しくなって追い掛けると、伸ばした手を向こうからは見えない下の方でぎゅっと繋いでくれる。 心がぽかぽかってして、俺からもきゅって握り返した。 そんな俺たちを見て、お姉ちゃんがニヤニヤしながらスマホに高速で何かを打ち込んでいたけど…… 相手は級長か、それとも他の人か。 面倒臭いから、気付かないフリをしよう。

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