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第376話 無意識
斗織の無意識以上に無意識で、俺はぽよぽよ笑っちゃってたらしい。(お姉ちゃん談)
俺の手首を押さえてた手を放して、斗織が呆れたように笑った。
「なんでそんな嬉しそうなんだよ?」
くしゃくしゃって、かき混ぜるように髪を撫でられる。
「ううん。なんでもなぁい」
「そうかよ」
「んでも、どうしても聞きたいなら話してもいいですよ?」
「お前が話してェだけだろ?」
半分呆れたように、半分からかうように、笑いながらほっぺを撫でられた。
「えぇー、聞きたくないの?」
「聞いてやろうか?」
「じゃあ、後でね」
「結局今話さねェんだな」
「うん。恥ずかしいから今はダメ」
「なんだそりゃあ」
トン、と軽く頭を小突かれた。
「いったーい」
「痛くしてねェだろ?」
「えいっ」
「コラ、なんで体当たりだよ」
「俺の痛みを思い知れ」
「痛くねェし。非力」
「っ!! なんだとぉっ!?」
「おっと」
さっきより強く体当りしたのに、やっぱり簡単に受け止められた。
もーっ、ずるい、斗織。
俺より体格良いし、その分、力も強いしさ。
男として、色々ずるい!
格好良いし……
ぷーってほっぺを膨らませて見上げると、「はいはい」って肩を抱き寄せられた。
「拗ねんなよ」
そんな風に顔、覗きこまれたら……
斗織の匂いが濃くなって、トロンってしてくる。
もうちょっと近付いたら、唇くっついちゃいそう……
「っ! 遼、取り敢えず座り直しなさい」
目の前の男前が、不意にハッとしたように目を瞠った。
「え…?」
斗織なのに、斗織じゃないみたい。
なんだその話し口調は。
良く分からないまま押し離されて、クッションにペタリと座り直す。
納得はいってないけどね。
もっとくっついてたかったからね。
「貴方たち、まるで恋人同士みたいに仲良しねぇ」
だけど不思議そうに発されたその言葉に、一瞬で俺は斗織の意図に気付いた。
俺たちまた、気付かない間にイチャイチャしてた!?
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