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第377話 お酒の効果
恋人みたいに仲良しなんじゃなくて、実は正真正銘 仲良しの恋人同士なんです!
なんてまさか言える筈もなくて………
「お互いに大好きだもんね」
まるで園児に向けられたみたいなお姉ちゃんからの問い掛けに、声も出せずに静かにコクリと頷いた。
顔、赤くなってないだろうか。
「遼司さんが女性なら斗織のお嫁さんに来て頂くのに…、ねえ、斗織」
お酒も入って上機嫌な斗織のお母さんがそう言って斗織を見やる。
「お料理上手で器量も良くて、品行方正なんて、理想のお嫁さんねぇ、遼司さんは。本当、男の子にしておくのが勿体無いくらいですわ」
「男だって、嫁に貰うけどな」
「えっ…?」
ボソッと呟いた斗織の言葉が、聞き違いだと思ったのか…。
斗織のお母さんは一瞬吃驚した顔を見せたけど、すぐにとりなしホホホと笑った。
「ごめんなさいね。男の子に向かってお嫁さんだなんて」
「あ、いえっ。良く言われますから」
それに、斗織のお嫁さんになんて言われたら、ごめんなさいどころか、逆に嬉しいに決まってる!
「奥様がそう仰られるのも当然ですよ~。弟は、そこいらの女子高生どころかOLだって裸足で逃げ出す嫁っぷりですからね」
斗織のお母さんの褒め言葉に、俄然調子に乗り出すお姉ちゃん。
俺と斗織をアシストしてくれようとしてるんだと思うけど……そこまで持ち上げられるとちょっと恥ずかしい。
「斗織君素敵だし、男前だし、この子の事とっても大切にしてくれそうだし。斗織君のお嫁さんになら喜んで送り出しますよ!ね、遼ちゃん、斗織君大好きだもんね?」
「えっ!? あ……うん…っ」
突然笑顔で振り返られて、面食らったけど頷く。
そりゃあ、大好きすぎるほどに大好きだけど……、これ、ドコまでOKなやつ…?
「あら、じゃあ遼司のことは斗織君に貰ってもらおうかしら」
母さんまで乗り出した…!!
「じゃあ、遠慮無く」
「斗織っ?!」
「可愛いお嫁さんが来てくれてよかったねぇ、斗織」
お酒が入ってる所為か、ちょっと赤い顔でにこやかに笑うのは斗織のお父さんで……。
「実はわたくしお料理が苦手なの。遼司さん、教えてくださる?」
まさか、斗織のお母さんまでも…!!?
「あのっ…、俺で良かったら……一緒に作って下さいっ!」
多分、向こうは社交辞令で言ってくれてるんだろうけど、ペコリと頭を下げる。
すると、今まで嗅いだことのないくらい上等なお香がふわりと香り、頭の上に影と、優しい感触が乗っかった。
「今度我が家にもいらっしゃい」
「っ───!? はいっ!」
「あら、本当に触り心地の良い素敵な御髪 なのね」
撫でられた……
撫でられてるよ、俺!
斗織のお母さんに……!!
「どれ、私も」
斗織のお父さんにも!!
「もういいでしょう。放してやって下さい」
両親相手に敬語を使う、ちょっと可愛い息子の斗織に、グイッて抱き寄せられた。
「斗織君、ヤキモチ?ヤキモチなの?」
お姉ちゃんの顔が煩い。
「俺の嫁なんで」
「……それ、ドコまでいいの?」
うちの家族は平気だけど、この冗談(だと思って乗ってると思う)に、斗織のご両親は何処まで付き合ってくれるのか…。
不安に思って、俺を抱きかかえる斗織にコソッと訊けば、
「酒入ってる内は有効」
おでこにちゅってして、改めて膝に抱え直された。
それなら、大丈夫なのかな……?
えっ、でも、デコちゅーまでしちゃったけど……
まだ不安がすべて払拭された訳じゃないけど、そっと見渡せば、斗織のお父さんもお母さんも、勿論一也お兄さんも、羽崎家一同微笑ましげに俺たちを見守ってくれてるから。
それなら大丈夫なのかな……って。
ピンッと伸びてた背中を斗織の胸に寄り掛けて、すっかり冷めて飲みやすい温度になったミルクティーへと手を伸ばした。
「斗織君、遼ちゃん、こっち向いて!あ~ん、2人共かわいいっ」
お姉ちゃん、シャッター音煩い……
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