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第381話 隙間時間

3学期は20日までで、21日から春休み。 だけど19、20日が土日だから、実質学校は18日まで。 ホワイトデーの14日の週が、俺が学校に通う最後の週。 ホワイトデーにそわそわもするけど、やっぱりカウントダウンで日々淋しさが募ってく。 斗織、リューガくん、ひろたんは後ろの方の席だけど、俺と級長と中山は横並びだから、授業が終わる度に後ろの3人が前の席に集まってくる。 男って授業の短い隙間にはあんまりそういう事しないんだけど、俺達はカップル三組の6人友達グループだから、多分特別。 ちょっとの時間でも、ひっついていたいのです。 授業が終わって先生が歩きだした瞬間、立ち上がって後ろにバッ!と目をやれば、気付いた斗織がプッと噴き出した。 「はやく!はやく!」 普通の速度で歩いてくる斗織を、イスをぽんぽん叩いて急かす。 「おとなしく待ってらんねェのか」 呆れたように指の背で俺のほっぺた撫で上げて、斗織は俺の空けた席に腰を下ろす。 すかさずその膝に座っちゃう。 今更見慣れた光景で、もう誰もなんにも言ってこない。 「遼、放課後ちょっと寄るトコあんだけど、教室かどっかで待ってられっか?」 「うん、教室で待ってる。茶道部の打ち合わせ?」 「いや、保健室」 「具合悪いの?ケガした?」 「いや、ヤボ用」 「わかった、待ってる」 お膝に抱っこじゃ顔見て話しづらいから、学校では膝の上に横だっこが定番。 リューガくんとひろたんは恥ずかしいみたいで、抱っこじゃないけど……。それぞれの優しい恋人が立たせておくのは忍びないって思ったのかな。 中山は机に腰を寄り掛けて、級長は隣にピンと立って、イスは2人に譲ってる。 「リョーちん、斗織のやつホワイトデーにマナちゃんトコ行くとか、もしかして浮気じゃねぇの?」 リューガくんが冗談を言ってひひって笑う。 「えっ……、羽崎くん…?」 ああ、ほら。ひろたんが微妙に本気にしちゃってる。 「俺、斗織のこと信じてるから…!」 態と演技くさくウルウル目で見つめると、 「……高原で遊んでやんな」 おでこに軽くデコピンを当てられた。 「っ…だよね!だよねえ!……もぉっ、りゅーがくんとりょーくんは、僕で遊ぶの禁止!」 「ふはっ、わりぃわりぃ。リアクションいいからさあ」 「ひろたん、どんまい!」 「どんまいじゃないよ!僕、りょーくんにも言ってるんだからね?!」 「怒る高原かわいい…」 「悠成くんっ、そんな場合じゃなくてっ」 「中山が言うと変態臭すげーな」 「中山きもちわるーい」 「だからどうして皆俺にだけ厳しいの!?」 どうしてって訊かれても…… 「「中山だからとしか」」 「なんでそこでハモっちゃうわけ!?」 だからそれも、 「「相手が中山だからだよねぇ(だよなぁ)」」 再び声揃っちゃうくらい当たり前な理由に納得行かないのか、中山はとうとうその場に崩れ落ちた。 なんかイジイジしてる。 「ジメジメしてんな、うぜェ」 半分冗談な俺達と異なり、本気で蔑んでる俺のカレシ様のキツ~イ一言に、中山はとうとうメンタル打ち砕かれたらしい。 「高原~っ!」 ひろたんに抱き着いて泣き出した。涙は出てないけど。 ちょっと言い過ぎたかな? でもひろたん、心配しつつも、ちょっと嬉しそうだし。 ひろたんが嬉しいなら別にいっか! 「中山君、もう少し顔の見えない角度でお願いします。いえ、高原君の顔は正面からバッチリ写る感じで」 ……あ、変な演出家がイキイキしだした。

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